D機関情報

D機関情報

西村京太郎が1966年に発表した長編スパイ小説。作者の代表作の一つであり、自選ベスト1にも選ばれている。

概要

本作は、第二次世界大戦中のスイスを舞台に、ソビエト、中国、ドイツのスパイが暗躍する中、日本の海軍中佐が和平への道を探るべく奔走する姿を描いている。軍人としての任務と祖国を救うという使命の間で葛藤する主人公の姿や、和平交渉を妨害する組織との駆け引きがスリリングに展開される。

あらすじ

1944年3月、海軍中佐・関谷直人は、軍令部総長から中立国スイスでの水銀購入という密命を受ける。潜水艦でドイツへ向かった関谷は、到着後、親友である矢部の事故死を知らされる。休暇でスイスを訪れていた矢部の死に疑問を抱いた関谷は、真相を探るためスイスへ向かう。

スイスで関谷は、様々な人物と出会い、事件に巻き込まれていく。ドイツ情報局員を名乗るハンク、ソビエトの諜報機関員ロパーヒン、アメリカ人のナンシイ。彼らの思惑が絡み合う中、関谷は矢部の残した「D」という謎の言葉にたどり着く。

矢部の死の真相、そして「D」の意味を追ううちに、関谷は連合国との和平交渉の存在を知る。しかし、彼は軍人として戦い抜くべきか、和平の道を探るべきかという葛藤に苦しむ。祖国を救うためには、軍律に背く覚悟で和平交渉に臨むしかない。関谷は、D機関と呼ばれる組織と接触し、和平交渉を進めることを決意する。

しかし、その和平交渉を阻止しようとする組織が暗躍していた。タイムリミットが迫る中、関谷は祖国を救うために、命を懸けた駆け引きに挑む。

登場人物

関谷直人: 日本帝国海軍中佐。水銀購入の密命を受けスイスへ。
矢部将之: 海軍中佐。ドイツ駐在武官。スイスで事故死。
笠井: 新聞記者。矢部と親交があった。
今井: スイス日本公使館の書記官
フォン・フリーデリク・ハンク: ドイツ情報局員。
ロパーヒン: ソビエトの諜報機関員。
ナンシイ: アメリカ人。「D」と言い残して死ぬ。
カール・エレン: 横浜生まれのドイツ人。ユダヤ人。
リタ・ガーネット: アメリカ人。D機関の諜報員。
「D」: D機関の代表者。通称「セイント」。

映画化

1988年、『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』の題名で映画化された。

関連項目

D-デイ
ノルマンディー上陸作戦
* サイパンの戦い

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