DD戦車

DD戦車：水陸両用戦車の開発、構造、戦歴、そして現存車両

DD戦車（Duplex Drive tanks）は、第二次世界大戦中に開発された水陸両用戦車です。DDは複合駆動の略で、ドナルドダック戦車とも呼ばれます。特に、1944年のノルマンディー上陸作戦で使用されたM4中戦車を指すことが多いです。

開発の背景

上陸作戦において、海岸線に上陸する歩兵部隊は敵の攻撃に対して脆弱でした。戦車を上陸用舟艇で運搬すると、舟艇ごとドイツ軍の砲撃の標的になる可能性がありました。そこで、戦車自体に浮航能力を付与することで、舟艇の損失を防ぎ、上陸作戦を支援するというアイデアが生まれました。

構造と特徴

DD戦車は、既存の戦車に浮航用の装備を取り付けたものです。ハンガリー出身の技術者ニコラス・ストラウスラーが考案した防水生地を用いた折りたたみ式の防水スクリーン型の浮きが特徴的でした。この浮きにより、戦車の体積を大きく増加させることなく浮航能力を付与することが可能となりました。

M4中戦車をベースとしたDD戦車は、車体下部のシーリング、プロペラ駆動装置、車体を一周するストラウスラー式防水スクリーンとそれの膨張装置が追加されました。推進力は後部に装着された1対のプロペラから供給され、航行速度は最大4ノット（7km/h）でした。

戦歴

DD戦車は、ノルマンディー上陸作戦やドラグーン作戦、ライン渡河作戦などで投入されました。ノルマンディー上陸作戦では、ソード・ビーチ、ゴールド・ビーチ、ジュノー・ビーチ、ユタ・ビーチで使用され、一定の成果を上げました。しかし、オマハ・ビーチでは、沖から投入したDD戦車の大半が失われ、上陸作戦の遅延につながりました。

各ビーチでの戦況

ソード・ビーチ: 海面が穏やかであったため、順調に稼働しました。
ゴールド・ビーチ: 海が荒れており、上陸までに8両の戦車が失われました。
ジュノー・ビーチ: 29両中21両が上陸に成功しました。
ユタ・ビーチ: 28両中27両が上陸に成功しました。
* オマハ・ビーチ: 高さ6フィート（2m）の波により、29両中27両が沈没しました。

ドラグーン作戦

ドラグーン作戦では、計36両のDD戦車が使用されました。一部の戦車は沈没しましたが、多くは上陸に成功しました。

代替手段：潜水渡渉方式

DD方式以外にも、潜水渡渉方式という上陸方法がありました。これは、戦車が浮航するのではなく、海底の水中を走行するというものでした。ドイツ軍も同様の目的でTauchpanzer IIIという戦車を開発していました。

現存するDD戦車

DDバレンタインやDDシャーマンが、イギリスやフランス、アメリカなどで動態保存または展示されています。ノルマンディー上陸作戦で失われたDDシャーマンも引き上げられ、博物館に展示されています。

まとめ

DD戦車は、第二次世界大戦中の上陸作戦において、歩兵部隊を支援するために開発された水陸両用戦車です。その構造や戦歴は様々であり、成功例もあれば失敗例もありました。しかし、DD戦車の開発は、その後の水陸両用車両の開発に大きな影響を与えました。

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