DDX-TP

DDX-TP（Digital Data eXchange Telephone Packet）とは

DDX-TPは、かつてNTTコミュニケーションズが提供していたパケット通信サービスで、正式名称を「第2種パケット交換サービス」といいます。このサービスは、1985年4月に当時の日本電信電話公社（現NTT）によって開始されました。

サービス概要

DDX-TPは、同じくNTTが提供していた「DDX-P」（第1種パケット交換サービス）を補完する形で登場しました。DDX-PはX.25規格に基づくパケット通信サービスでしたが、利用には専用回線が必要でした。一方、DDX-TPは一般の固定電話回線を通じてパケット通信を利用できる点が大きな違いです。このため、より手軽にパケット通信を利用できる環境が整いました。ただし、DDX-TPはDDX-Pとのパケット交換を行うためのサービスであり、DDX-TP同士での直接通信はできませんでした。

通信速度は最大4800bpsでしたが、4800bpsでは半二重通信となるため、実質的な速度は約半分に低下しました。

パソコン通信での利用

1985年の通信自由化以降、パソコン通信が盛んになりましたが、当時の主要なパソコン通信ホストは東京に集中しており、地方のユーザーは高額な電話料金に悩まされていました。一部の商用パソコン通信サービスは、DDX-Pに対応することで通信料金の緩和を試みましたが、DDX-TPの料金体系が接続時間と距離に依存していたため、大幅な削減には至りませんでした。その後、大手パソコン通信サービスがVAN（Value Added Network）を活用して全国にアクセスポイントを設置するようになると、個人でのDDX-TP利用は減少しました。

ホームトレード等での利用

DDX-TPは当初、ホームトレードなどの用途が想定されていました。実際に、ファミリーコンピュータ（ファミコン）から株取引を可能にする「ファミコントレード」向けに、DDX-TP対応のモデムも発売されました。しかし、低速な通信速度や不安定な通信状況が課題となり、普及には至りませんでした。

当時の関係者によると、交換機から規格外の信号が送られることもあったそうです。1990年6月1日には、ISDNベースの「INS-P」サービスが開始され、INS-PはDDX-P網との相互通信も可能だったため、通信速度と料金面で優位なINS-Pが急速に普及しました。

それでも、1991年4月にはDDX-TPを利用したファミコンからの競馬の在宅投票サービスが開始されるなど、1990年代には一定の利用がありました。ファミコン用の通信アダプタだけでも、「ファミコントレード」用が約13万台、競馬の在宅投票用が約10万台弱が出荷されました。

VENUS-Pとの接続

当時KDD（現KDDI）が提供していた国際パケット通信網サービス「VENUS-P」とも接続しており、VENUS-P経由で海外との通信も可能でした。しかし、DDX-TP経由でのVENUS-P利用サービスは1998年に廃止されました。VENUS-P自体も2006年3月31日にサービスを終了しました。

サービスの終焉

1999年のNTT分割時に、DDX-TPのサービスはNTTコミュニケーションズに継承されました。2000年代後半にはほとんど利用されなくなりましたが、一部の銀行のオンラインバンキングサービスでは、サービスの利用にDDX-TPの契約が必須となるケースが残っていました。

DDX-TPは、2009年3月31日に新規申し込み受付を終了し、2010年3月31日にサービスを完全に終了しました。NTTコミュニケーションズは、他のサービスへの移行が困難なユーザー向けに、一定期間の利用継続を認めていましたが、その継続サービスも2012年3月31日までに順次終了しました。

料金体系

サービス開始当初の料金体系は、接続時間と距離に依存するものでした。

契約料: 800円
接続通信料（3分毎）
200bpsまたは300bps: 20円
1200bps: 30円
通信料（1パケット（128オクテット）あたり）
～100km: 0.4円
～500km: 0.5円
500kmを超える場合: 0.6円

このように、DDX-TPは時間と距離、そして通信量に応じて料金が加算される仕組みでした。

まとめ

DDX-TPは、パソコン通信黎明期において重要な役割を果たしたパケット通信サービスでしたが、技術の進歩とともに他のサービスに取って代わられました。しかし、その歴史は、日本の情報通信技術の発展を語る上で欠かせないものです。

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