DRIVING ALL NIGHT

「DRIVING ALL NIGHT」（ドライヴィング・オール・ナイト）は、日本のシンガーソングライター、尾崎豊によって発表された楽曲であり、彼の5枚目のシングルとして1985年10月21日にCBSソニーから世に送り出された。作詞・作曲は尾崎自身が手がけ、プロデュースは音楽プロデューサーの須藤晃が担当。前作「卒業」から約10ヶ月を経てリリースされたこの曲は、同年11月から始まる全国ツアー「LAST TEENAGE APPEARANCE」に勢いをつける目的も兼ねていた。

制作背景とテーマ

この楽曲は、尾崎が初めて著した書籍『誰かのクラクション』（1985年）の内容が制作の原点となっている。特に、同書に収められた「今日一日が、まるでちっぽけだというように、カレンダーには、日にちが、有りあまっているように見えた」という一節が、歌詞中の「ちっぽけな日々がありあまる壁から逃れるように」という表現に発展した。このことから、「ありあまる壁」とは、壁に掛けられたカレンダーを指しているとされる。

学校という管理された環境から自由になった若者が感じる内面的な葛藤、例えば拭いきれない焦燥感やどうしようもない無力感などが色濃く表現されている点が特徴だ。ノンフィクション作家の吉岡忍は、著書『放熱の行方』の中で、この曲が管理社会から脱した尾崎が抱く、空漠とした日常感覚や、世間に対する違和感を持ちながらも自身への確信が持てずに空回りするような苛立ちを描いていると分析している。

プロデューサーの須藤晃も、この曲には自己破壊や終末的なニュアンスが含まれていると語り、「今夜俺誰のために生きてるわけじゃないだろ」という一節を称賛しつつも、その刹那的な生き方や人生観に危機感を抱いていたという。また、当時の尾崎は洋楽をほとんど聴いていなかったにも関わらず、須藤は本作からジミ・ヘンドリックスやジム・モリソンといった破滅的なロックの響きを感じ取っていたと述べている。

リリース形態と収録バージョン

シングルは12インチ・シングルとしてリリースされ、B面には「十七歳の地図」のライブバージョン「SEVENTEEN'S MAP '85」が収められた。表題曲の「DRIVING ALL NIGHT」には、シングル盤とアルバム盤で異なるバージョンが存在する。シングルに収録されているのは、リリースに先行して1985年 8月25日に行われた大阪球場公演でのライブバージョンであり、長い間奏を経てフェイドアウトしない構成が特徴である。一方、同年11月28日にリリースされた3枚目のオリジナルアルバム『壊れた扉から』には、初のスタジオ録音バージョンが収録された。アルバムでは楽曲名が「Driving All Night」と小文字で表記されている。後に、1989年 3月21日には8センチCDとしても再リリースされている。

シングルのジャケットには、片膝立ちでタバコを手にし、下に落ちたジッポーを拾おうとする尾崎の姿を捉えたモノクロ写真が使用された。

ミュージックビデオとチャート成績

本作のミュージックビデオは、大阪球場公演のライブ映像を中心に構成されている。ライブ以外のシーンとしては、江東区の有明埠頭で尾崎がバイクに乗る様子が撮影された。交通量の少ない時間帯を狙ってノーヘルメットでの走行シーンを撮影中、第三者からの通報によりパトカーが駆けつけるというハプニングが発生。撮影班は映像の没収を恐れ、尾崎に単独で逮捕されるよう指示したが、尾崎は礼儀正しく応対し、すぐに解放されたという逸話が残っている。

オリコンチャートでは最高位9位を記録。登場回数は16回、売り上げ枚数は8.8万枚となっている。

ライブでの位置づけ

「DRIVING ALL NIGHT」は、1984年頃からライブで演奏され始め、その後は尾崎のほぼ全てのコンサートで披露される定番曲となった。主要なツアーでは、初期の頃から常にセットリストの上位、主に序盤の重要な位置で演奏されている。プロデューサーの須藤晃は、この曲や「Freeze Moon」を演奏する際に、尾崎の瞳が狂気めいたものに変わり、普段の礼儀正しい姿からは想像もできないほど別人のようになる様子を目の当たりにしたと語っている。そのライブでの圧倒的なパフォーマンスから、後年にリリースされた多くのライブアルバムにも収録されている。

収録アルバム

本作は、以下のアルバムに収録されている。

スタジオ音源
『壊れた扉から』（1985年）
『13/71 - THE BEST SELECTION|13_71 - THE BEST SELECTION』（2004年）
『SATURDAY 〜ROCK'N'ROLL BEST OF YUTAKA OZAKI』（2008年）
ライブ音源
『LAST TEENAGE APPEARANCE』（1987年） - 1985年 11月15日代々木オリンピックプール公演
『約束の日 Vol.1』（1993年） - 1991年10月30日代々木オリンピックプール公演
『MISSING BOY』（1997年） - 1991年5月20日横浜アリーナ公演
『OSAKA STADIUM on August 25th in 1985 Vol.1』（1998年） - 1985年 8月25日大阪球場公演
『LIVE CORE LIMITED VERSION YUTAKA OZAKI IN TOKYO DOME 1988/9/12』（2013年） - 1988年9月12日東京ドーム公演

この楽曲は、尾崎豊がその内面を剥き出しにして歌い上げた、彼のキャリアを語る上で欠かせない重要なロックナンバーであると言える。

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