DSオートモビルズ

DSオートモビルズ：シトロエンから独立したフランスの高級車ブランド

DSオートモビルズは、ステランティス傘下のフランスの高級自動車ブランドです。その歴史は、シトロエンの高級サブブランドとして2009年に始まりました。2014年6月1日のブランド設立後、2015年にはシトロエンから独立し、独自のブランドとして歩み始めました。ブランド名「DS」の由来は、シトロエンの伝説的なモデル「DS」からの連想であると広く考えられていますが、Different Spirit（異なった精神）やDistinctive Series（際立ったシリーズ）といった解釈も存在します。

ブランド設立の背景

DSオートモビルズ誕生の背景には、PSAグループ（当時）のブランド戦略がありました。PSAグループはプジョー、シトロエン、タルボ（現在は廃止）の3ブランドを擁していましたが、いずれも大衆車メーカーとしてのイメージが強く、プレミアムブランドとしての確立には至っていませんでした。グループはプレミアム価格設定に挑戦しましたが、既存ブランドではその価格を正当化できるほどのブランド力、商品力はありませんでした。

そこで、PSAグループは、シトロエンDSのデザイン遺産に着目しました。フラミニオ・ベルトーニとアンドレ・ルフェーブルによってデザインされたDSの革新的なデザインは、ブランドイメージを大きく変える可能性を秘めていました。このデザイン遺産を活かすことで、プレミアムブランドとしての地位を確立できると判断したのです。

ブランド確立に向けた取り組み

DSラインは、2010年初頭にシトロエンC3をベースとしたDS3からスタートしました。その後、DS4（シトロエンC4ベース）、DS5（独自開発）が発表され、徐々にブランド認知度を高めていきました。これらの初期モデルは、シトロエンのダブルシェブロンのロゴに加え、新しいDSロゴが採用され、ブランドの独自性を強調しました。

2014年、PSAグループのCEOカルロス・タバレスは、DSをシトロエンから独立させることを発表しました。この決定は、ヨーロッパ市場だけでなく、中国市場でも実行されました。中国市場では長安PSA（長安汽車との合弁企業）を通じて、独立したDSブランドが展開され、中国専用モデルも投入されました。これらの中国向けモデルでは、ダブルシェブロンのグリルは廃止され、DS独自のウインググリルとエンブレムが採用されました。

日本市場においても、DSブランドは2015年から販売を開始。当初はシトロエン販売店での併売でしたが、2017年からはブランド専用の販売体制を導入しました。「DS STORE」と、既存のシトロエン販売店に設置される「DS SALON」という2つの販売チャネルを通して、ブランドイメージの向上を図っています。

主要車種

現行車種:

DS 3: 2018年発表。当初は「DS 3 クロスバック」として発売されましたが、2023年5月のマイナーチェンジで車名が変更されました。
DS 4: シトロエンブランドからの移行モデル。初代は2010年発表。2015年にはフェイスリフト版と「DS 4 クロスバック」が発表され、2代目は2021年に発表されました。
DS 7: 2017年発表。2022年に「DS 7 クロスバック」から改名されました。
DS 9: 2020年発表の4ドアセダン。新型コロナウイルスの影響でジュネーブモーターショーでの公開は中止となり、オンラインでの発表となりました。

販売終了車種:

DS 3 (旧シトロエン・DS3)
DS 4S (中国専売)
DS 5 (旧シトロエン・DS5)
DS 5LS (中国専売)
* DS 6 (中国専売)

モータースポーツ活動

DSオートモビルズは、モータースポーツ部門「DSパフォーマンス」を擁し、フォーミュラEに積極的に参戦しています。参戦当初はDSヴァージン・レーシングとして、その後DSテチーター、そして現在はDSペンスキーとして、ドライバーズ、チームの両タイトルを獲得するなど、高い競争力を示しています。また、ステランティス傘下のマセラティにもパワートレインを供給しています。

DSオートモビルズは、シトロエンの遺産を継承しつつ、独自のブランドアイデンティティを確立し、高級車市場において存在感を高めています。今後の動向にも注目が集まります。

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