DivX

DivX（ディビックス）とは

DivXは、DivX, LLCによって開発されているビデオコーデックの一種です。当初はDivX Networks（旧称）が開発を担当していました。MPEG-4技術をベースにしており、高画質を維持しながらビデオファイルのサイズを小さく圧縮できるのが特徴です。

概要

DivXは、MPEG-4 Part 2（MPEG-4 ASP）に準拠した圧縮技術を採用しています。初期のバージョンでは音声コーデックも提供されていましたが、現在のバージョンでは除外されています。DivX関連の製品としては、コーデックパックのDivX Plus Codec Pack、メディアプレイヤーのDivX Plus Player、エンコーダのDivX Plus Converter、ウェブプレイヤーのDivX Plus Web Playerなどがセットで提供されています。

DivXコーデックは、その高い圧縮率と画質の良さから、長時間のビデオを小さなファイルサイズにできるため、広く利用されるようになりました。また、「DivX認証」を受けたDVDプレーヤーやその他の家電製品でDivX形式の動画を再生することができます。

コンテナ形式

DivXビデオのバージョン3からバージョン6までは、主にAVI形式が用いられていました。ASF、OGM、MOV、MP4などの他のコンテナフォーマットにも対応していますが、ハードウェアでの再生互換性を保つためにAVI形式（DivX形式を含む）での作成が推奨されています。

特に、AVI2.0（OpenDML）に対応していない機器が多いため、その場合はAVI1.0に変換する必要があります。
バージョン7からは、従来のAVI形式に代わり、Matroska（MKV）が標準コンテナとして採用されています。さらにバージョン9では、MP4出力にも対応しました。

インターレース解除

バージョン6.5から、インターレース動画のリアルタイムでのインターレース解除（デインタレース）に対応しました。これにより、DVD映像やビデオカメラ映像などのインターレースで撮影されたビデオをDivXビデオに変換する際に、エンコード時にデインタレース処理をせずに再生できるようになり、PCでの観覧が容易になりました。ただし、この機能は公式プログラムインストール時にのみ有効で、サードパーティ製のデコーダには搭載されていません。

DivX Media Format (DMF)

バージョン6では、DivX Media Format (DMF)という新しい形式が導入されました。拡張子は.divxまたは.divで、AVI2.0 (OpenDML) を拡張したファイルフォーマットであり、従来のAVIフォーマットとの互換性があります。DMFでは、XSUB字幕、対話式ビデオメニュー、複数DivXビデオの格納、多重音声、チャプターポイント、XTAGビデオタグなどに対応しています。これらの機能を持つDivXビデオは、DivX Ultraとも呼ばれ、対応機器で再生できます。

DMFはAVI形式を拡張したものなので、多重音声やXSUB字幕などの情報はAVIのRIFFヘッダに格納されています。そのため、古いプレーヤーでも基本的なビデオと音声の再生は可能ですが、DMFの新機能は利用できません。DivX AuthorというDMFオーサリングツールがありましたが、現在はサポートが終了しています。

DivX Plus HD

バージョン7では、H.264ビデオコーデック、AAC 音声コーデック、Matroskaコンテナ形式を採用したDivX Plus HDという新しいフォーマットが登場しました。拡張子は.mkvで、従来のDivXビデオとは互換性がありません。DivX Plus HD対応機器でのみ再生可能です。複数字幕、複数音声、チャプターポイントの自動作成、なめらかな早送りと巻き戻し、メタデータ表示などの機能があります。バージョン9では、携帯電話やタブレットで普及しているMP4（iPhoneとiPad向け）への変換機能が追加されました。

DivX HEVC

現在、H.265 コーデックを使用したDivX HEVCが開発中です。

プロファイルとFOURCC

DivXには様々なプロファイルが存在し、それらはFOURCCという4文字のコードで識別されます。これにより、対応するデコーダを正しく識別し、再生を行うことができます。

略歴

バージョン3.11は、2時間程度の動画データをCD1枚分である約700MBにまで圧縮できることから人気を集めました。しかし、このバージョンはマイクロソフトのMS-MPEG4とWMAの海賊版であり、FOURCCを書き換えるだけでMS-MPEG4として再生できました。その後、独自のコーデックがバージョン4としてリリースされ、MPEG LAからライセンスを取得することで法的な問題を解決しました。

DivX, Inc.の設立と変遷

DivXコーデックは、当初フランス人エンジニアのジェローム・ロタによってMS-MPEG4のバイナリを改造して公開されたものでした。その後、2000年にジョーダン・グリーンホールらと共にDivX, Inc.が設立され、法的な問題を解決したDivXコーデックが主力商品となりました。デコード機能は無償で提供されており、DivX Proという拡張機能が試用版として提供されていました。DivX, Inc.は、オープンソースプロジェクト化する動きも見せましたが、その後方針を転換し、その結果、フリーのビデオコーデック Xvidが誕生しました。

2007年にはH.264技術を持つ独メインコンセプト社を買収し、バージョン7でH.264技術が採用されました。DivXソフトウェアにはYahoo!ツールバーが含まれており、広告収入を得ていましたが、Yahoo!との契約打ち切りにより提訴されました。その後、2010年にはソニック・ソルーションズに買収され、さらに2014年にはブラックストーン・グループとパララックス・キャピタルに、2015年にはニューライオンに買収されています。

DivXエコシステム

DivXは、DVDプレーヤーをはじめとする様々なデジタル機器でビデオを簡単に楽しめる環境を目指しています。DivX搭載のデジタル機器が増えることで、ユーザーはファイル形式を気にすることなく、ビデオの撮影、編集、再生、鑑賞をスムーズに行えるようになります。

ゲーム機への対応

2007年11月には、ソニーのゲーム機プレイステーション3 (PS3) にDivXビデオテクノロジーが搭載されることが発表され、公式にDivXビデオ再生がサポートされる初のゲーム機となりました。

Stage6

Stage6は、DivX, Inc.が運営していた無料の動画共有サービスであり、ソーシャル・ネットワーキング・サービスでしたが、2008年に閉鎖されました。

DivXの歴史

- 1999年：ジェローム・ロタがDivXバージョン3.11を開発（MS-MPEG4 V3の海賊版）
- 2000年：DivX Networksを設立
- 2004年：DivXバージョン5.2を公開
- 2005年：DivXバージョン6を公開、DivX Media Formatに対応
- 2006年：Stage6を開設
- 2007年：DivXバージョン6.7を公開、プレイステーション3のDivX対応を発表、独MainConceptを買収
- 2008年：Stage6を閉鎖
- 2009年：DivXバージョン7を公開、パナソニックとのDivX Plus HDライセンス契約
- 2010年：東芝とのDivX Plus HDライセンス契約、米ソニックソルーションズによる買収
- 2014年：ブラックストーン・グループとパララックス・キャピタルにより買収
- 2015年：ニューライオンによる買収が決定

外部リンク

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