E・B・ホワイト

E・B・ホワイト（Elwyn Brooks White、1899年7月11日 - 1985年10月1日）は、20世紀アメリカを代表する作家の一人です。ニューヨーク州マウントバーノンに生を受け、その生涯を通じて児童文学、エッセイ、評論、詩など多岐にわたる分野で優れた作品を遺しました。

コーネル大学で学び、1921年に卒業。卒業後はニューヨークで職を転々とした後、やがて著名な雑誌『ザ・ニューヨーカー』の主要なライターとして活動するようになります。同誌を拠点に、ユーモアと洞察力に富んだ評論やエッセイ、詩などを発表し、その洗練された文体と独特の視点で多くの読者を獲得しました。生涯で20冊を超える著作を世に送り出し、多才な作家としての地位を確立しました。

彼のキャリアにおける大きな転機は、1938年に生活の場を田舎に移したことでした。農場で動物たちに囲まれた暮らしを始めた彼は、この経験から深いインスピレーションを得ます。そこで出会った動物たちの姿は、後に彼の代表作となる児童文学のキャラクターたちに命を吹き込むこととなります。

特に児童文学の分野では、今日なお世界中の子供たちに読み継がれる傑作を生み出しました。ネズミの男の子が冒険する『スチュアート・リトル』、農場のこぶたと賢いクモの友情を描いた『シャーロットのおくりもの』、そして声を失った白鳥の物語『白鳥のトランペット』は、彼の児童文学の金字塔と言えるでしょう。これらの作品は、動物と人間の間の絆、生命の尊さ、友情、そして死といった普遍的なテーマを、温かく詩的な筆致で描いています。

彼の功績は高く評価され、特に『スチュアート・リトル』と『シャーロットのおくりもの』は、1970年にアメリカの児童文学作家に贈られる最高の栄誉の一つであるローラ・インガルス・ワイルダー賞を受賞しました。これらの作品はいずれも後に映画化され、より多くの人々に親しまれることとなりました。また、『白鳥のトランペット』は国際児童図書評議会により、国際的に最も重要な文学作品の一つとして絶賛されるなど、世界的な名声を確立しました。この他にも、ホワイトはその文学的貢献に対して数々の権威ある賞を受賞しています。

私生活では、『ザ・ニューヨーカー』誌の編集者であったキャサリン・アードーと特別な出会いを果たします。ホワイトが同誌に原稿を持ち込んだことがきっかけで知り合い、彼女の推薦でライターとなった後、1929年にキャサリンは前夫と離婚し、ホワイトと再婚しました。キャサリンには連れ子がおり、後に著名な野球ライターとなるロジャー・エンジェルなどがいます。また、ホワイトの実子には船舶工学士のジョエル・ホワイトがいます。さらに興味深い繋がりとして、妻キャサリンの伯母の夫は、日本オリンピック委員会の創設者の一人である大森兵蔵でした。大森兵蔵はホワイトのエッセイ集『One Man's Meat』にも登場しています。

ホワイトの作品は、日本においても多くの翻訳者によって紹介され、世代を超えて愛されています。『こぶたとくも』（後に『シャーロットのおくりもの』と改題）や『ちびっこスチュアート』（後に『スチュアートの大ぼうけん』と改題）などの初期の翻訳から、今日に至るまで様々な訳本が出版されており、その人気は衰えることがありません。

E・B・ホワイトは、ユーモアと深い洞察力、そして人間や自然、動物たちへの温かい眼差しをもって、多くの読者の心に響く作品を数多く遺しました。1985年10月、彼はその豊かな生涯を閉じましたが、その紡ぎ出した言葉は、今もなお世界中で生き続けています。

もう一度検索