EDVAC

EDVAC：初期のプログラム内蔵方式コンピュータの概要

EDVAC（エドバック、電子離散変数自動計算機）は、コンピュータ技術の黎明期において重要な役割を果たした歴史的な電子計算機です。ENIACの開発に携わったジョン・モークリーとジョン・プレスパー・エッカートが1944年に設計を提案し、これに基づいて開発が進められました。EDVACは二進数を採用した初のプログラム内蔵方式コンピュータであり、その設計は当時の計算機技術に革新をもたらしました。

計画と開発の背景

ENIACが稼働する前の1944年8月、モークリーとエッカートは新たなコンピュータの設計を思いつきました。この設計には、ENIACの構築中に得られた多くの改善点が盛り込まれており、特に高速な遅延記憶装置を採用することが決定されました。EDVACはペンシルベニア大学の弾道研究所向けに製作されることとなりました。ジョン・フォン・ノイマンも設計チームに加わり、彼の理論的な視点が設計に取り入れられていきました。

1945年には、フォン・ノイマンが論理設計についての考察をまとめた『EDVACに関する報告書の第一草稿』が作成され、これがEDVACの基礎となります。開発契約は1946年4月に結ばれ、コンピュータの名称は当初「Electronic Discrete Variable Automatic Calculator」とされましたが、最終的にはEDVACという略称が一般的に使用されるようになりました。

EDVACの仕様と性能

EDVACは二進数を基本にしており、加算、減算、乗算、除算といった演算が可能でした。メモリは遅延記憶装置を使用し、当初は1000ワード（1ワードは44ビット）を持ち、後に1024ワードに拡張されました。構成部品には、磁気テープの読み書き装置、オシロスコープ付き制御ユニット、命令を分配するための装置、演算を行う装置が含まれていました。

加算には846マイクロ秒、乗算には2900マイクロ秒の時間がかかり、全体で約6000本の真空管と12000個のダイオードを使用し、消費電力は56kWでした。重量7,850kg、設置面積は45.5平方メートルで、運用には30人が交代で作業を行っていました。

運用と進捗

EDVACは1949年8月に弾道研究所に設置され、いくつかの課題を経て1951年に部分的に稼働しました。この遅れは、特許権を巡る争いが影響したとされています。エッカートとモークリーは後に独立して会社を設立しEDVACプロジェクトに関与しました。

1953年にはパンチカード装置、1954年には外部記憶としての磁気ドラムメモリ、1958年には浮動小数点演算装置が追加されるなど、EDVACは徐々に進化を遂げました。その結果、1960年には1日20時間エラーなしで動作し、平均して1日8時間の運用が実現しました。

プログラム内蔵方式の影響

EDVACの設計には、プログラム内蔵方式という新しい概念が導入されました。この着想はモークリーとエッカートとされているものの、バーナムの名によって広く知られるようになっています。その結果、ノイマンの名が後世に引き継がれることにより、プログラム内蔵方式の功績がモークリーとエッカートの手から離れた形になったとされています。これが彼らがEDVACの開発から撤退する一因とも言われています。

EDVACは結局のところ、1951年時点で完成することとなりましたが、当時としては非常に高い信頼性と生産性を誇るコンピュータでした。技術的な革新がもたらしたこの歴史的な成果は、後のコンピュータ技術の発展に大きな影響を与えました。

結論

EDVACは、初期のプログラム内蔵方式コンピュータとして現在も広く言及され、コンピュータ技術史において重要な位置を占めています。その設計や運用に関する情報は、後に続くコンピュータ開発においても貴重なテンプレートとなっています。

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