ETOPS

ETOPSについて

ETOPS（Extended-range Twin-engine Operational Performance Standards）は、民間旅客機の安全性を向上させるために設定された規則です。この基準は、エンジンが2基しかない旅客機が、1基のエンジンが故障した際でも、一定時間内に代替の空港に緊急着陸できる航路での運航を許可するものです。つまり、ETOPSはエンジンが1基のみでの飛行が可能な時間を定義するものといえます。

日本では、国土交通省がETOPSを「双発機による長距離進出運航」と位置づけ、運航に関する基準を設けています。この規則は将来的に新たな提案であるLROPS（Long Range Operational Performance Standards）に置き換わる可能性がありますが、現時点では一般的にETOPSが用いられています。また、EDTO（Extended Diversion Time Operations）という新たな概念も提唱され、ICAOのワークショップで議論されています。

ETOPSの歴史的背景

ETOPSが制定される以前、エンジンの信頼性はまだ低く、双発機は近隣の空港から100マイルの範囲内、1953年以降は30分以上離れた場所を飛行することが認められていませんでした。この制約により、大洋や北極を跨ぐ航路には双発旅客機を使用できませんでした。しかし、1980年代に入るとエンジンの信頼性が向上し、エンジンが1基停止した場合の飛行可能時間が120分に延長されました。これを受けて、ETOPS-120ルールが導入され、認定された双発機は120分内の距離を飛行することができるようになりました。これにより、経済的な双発機はより多くの路線で運航できるようになり、従来の3発機や4発機の需要が減少しました。

その後、さらなる信頼性の向上に伴い、ETOPS-180やETOPS-207などの規定が設けられました。これにより、航続距離の長い双発機は南極を除く全世界的に飛行することが可能となりました。

ETOPSの認定プロセス

ETOPSの認定は、アメリカ連邦航空局（FAA）および欧州航空安全機関（EASA）の2つの機関によって行われます。まず、機体とエンジンの組み合わせごとに型式認定（ETOPS type approval）が実施され、その後各航空会社が運航する機体に対する個別認可が必要です。
特定の航空会社はコストを削減するために、同じ機種の中でETOPS「認定」と「未認定」の機体を混在させることがあります。ETOPSに認定された機体は、主に洋上長距離の運航に使用されるのに対し、未認定の機体は陸上や短距離の洋上運航に使用されることが一般的です。

ETOPSのカテゴリーの進展

ETOPSのカテゴリーは年々進展しています。ETOPS-120からETOPS-180へと認定を受けたのはボーイング777で、双発機のエンジン信頼性の向上がその理由です。その後も、ボーイング757、767、787やエアバスの航空機も次々に認定を受け、多くの飛行機がETOPS-180にまで昇格しました。

また、2009年にはエアバスA330に対するETOPS-240の認定が行われ、さらに2011年にはボーイング777に対するETOPS-330が認定されました。これにより、トリプルエンジン機においても初めてのETOPS認定を得ることとなりました。

ETOPSの空港要件

ETOPS運航を行う場合、双発機はもちろんですが、運航する空港の要件も厳格に設定されています。具体的には、航路周辺の緊急着陸に適した空港は「Adequate Airport」と呼ばれ、安全に着陸できる条件を満たす必要があります。さらに、より厳格な条件を満たす空港は「Suitable Airport」として定義され、これには救難体制や通信状況などの要件が含まれています。

このように、ETOPSは双発の旅客機の運航基準として非常に重要な役割を果たしています。今後も航空の安全性を高めるために進化し続けることが求められるでしょう。

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