EWS-UX

EWS-UXとは

EWS-UXは、[日本電気]が開発・販売していたエンジニアリングワークステーションEWS4800シリーズ専用のUNIXオペレーティングシステムです。1980年代、高性能なワークステーションがオフィスや開発現場に普及し始めた時期に、EWS4800と共に市場を席巻しました。当時のワークステーションの多くがUNIXをベースとしており、EWS-UXも例外ではありませんでした。System Vをベースに開発され、高度な計算処理能力と安定した動作環境を提供しました。

歴史

1980年代、ワークステーションはミニコンピュータに代わる存在として台頭し、「一人一台」というコンセプトを実現しました。その多くがUNIXを採用する中で、NECのEWS4800もSysVベースのEWS-UXを搭載し、市場で確固たる地位を築きました。特に、2次元CADソフトウェア「CAE-2D/MA[E]」や、SX-OSから移植された3次元CADソフトウェア「CAE-3D/MA[E]」、地図管理ソフトウェア「MAPVIEW」などが人気を博し、1993年頃まで高いシェアを維持しました。

テレビCMでは、古舘伊知郎氏を起用し、「四方八方、4800シリーズ」というキャッチコピーで、EWS4800とEWS-UXをアピールしました。この広告戦略も功を奏し、郵政省や通商産業省といった主要官庁のシステムにも採用され、「NECのオープン化の旗印」と称されました。

当初、EWS4800はモトローラの68000シリーズCPUを搭載していましたが、後にMIPSアーキテクチャのプロセッサに移行しました。この移行に伴い、ソニー、住友電工、DEC(Digital Equipment Corporation)とMIPSアーキテクチャ互換のアライアンスを結びました。しかし、DECは後に自社開発のAlphaプロセッサに切り替えたため、このアライアンスから脱退しました。

その後、EWS-UXはUP4800向けのUP-UXと統合され、UX/4800として継続されました。しかし、2000年代に入ると、パーソナルコンピュータの性能向上と低価格化により、ワークステーション市場は縮小しました。NECはコスト削減のため、ハードウェア面でヒューレット・パッカードと協業し、UNIX OSもHP-UXをベースとしたものに切り替えました。これにより、2010年代現在では、スーパーコンピュータSXシリーズ用のSUPER-UXなどの特殊なものを除き、NEC独自のUNIX系システムは提供されていません。

バージョン

EWS-UXには、いくつかのバージョンが存在しました。

EWS-UX/V: System V Release 2(SVR2)ベースで、モトローラ製のMC68020、MC68030、MC68040プロセッサを搭載したEWS4800シリーズに対応していました。

EWS-UX/V(Rel4.0): System V Release 4(SVR4)ベースで、MIPS社の[R3000]とR4000プロセッサを搭載したEWS4800シリーズに対応していました。

EWS-UX/V(Rel4.2): System V Release 4.2(SVR4.2)ベースで、R4400、VR4200、R4600などのプロセッサに対応していました。

EWS-UX/V(Rel4.2MP): System V Release 4.2MP(SVR4.2MP)ベースで、R4400MCを使用したマルチプロセッサシステムに対応していました。このバージョンでは、実質的にUP-UXとの統合が完了していました。

EWS-UXは、NECのワークステーション事業を支えた重要なオペレーティングシステムであり、当時のUNIX市場における競争の一翼を担いました。その歴史は、技術の進化と市場の変化を物語るものでもあります。

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