MC68040

MC68040

MC68040は、1990年にモトローラ（現NXPセミコンダクターズ）が開発したM68000ファミリのマイクロプロセッサです。2016年現在はロチェスターエレクトロニクスが製造しています。当初は仕様通りに完成せず、「XC68040」として出荷されましたが、後に「MC68040」と刻印されたものも存在します。

MC68030の後継として開発され、MC68060にその系統が受け継がれました。MC68050は開発が中止されています。

概要

MC68040は、M68000ファミリで初めてFPU（浮動小数点演算ユニット）を内蔵したプロセッサです。これにより、FPUとMMU（メモリ管理ユニット）がチップに統合されました。内部ハーバード・アーキテクチャを採用し、命令とデータのメモリユニットを分離、それぞれに4KBのキャッシュとMMU、キャッシュ/スヌープコントローラを搭載しています。命令パイプラインは6ステージです。

120万個のトランジスタを集積し、平均20MIPSを超える演算性能を発揮します。MC68030と比較して、同一クロックで平均2.5〜3倍の高速化を実現しました。内蔵FPUも高性能で、ピーク時には8MFLOPS、平均で3.5MFLOPSの性能を発揮し、MC68882 FPUと比較して平均4〜6倍高速です。

設計段階でトランジスタ数の限界に達することが判明し、フル機能のFPUではなく、一部機能を制限したLC版が搭載されました。このため、MC68040の内蔵FPUでは、MC68881やMC68882で使用可能だったIEEEの超越関数が使用できません。超越関数は、FPSP（浮動小数点サポートパッケージ）でエミュレートされますが、頻繁に使用すると性能が低下します。

MC68040は、発熱の問題も抱えていました。同一クロック周波数ではMC68030の倍以上の性能を発揮するものの、ダイサイズとキャッシュのために消費電力が大きくなり、クロック周波数を40MHzまでしか上げられませんでした。25MHzの低発熱版（68040HRC25）を除き、25MHzでもヒートシンクが必要です。

Intelのi486と競合する製品でしたが、同一クロック周波数ではi486を上回る性能を持っていました。しかし、i486はより高いクロック周波数（最大100MHz）を実現し、最終的にMC68040は性能面でi486に対抗できませんでした。

Macintoshのカタログなどで33MHzのMC68040が33/66MHzと表記されることがありましたが、これはMC68040が2系統のクロック（BCLKとPCLK）を必要とするためです。PCLKは特殊なタイミングエッジで動作するロジックに使用されており、プロセッサ内部が倍速で動作しているわけではありません。

主なバリエーション

68LC040: 低コスト化のため、FPUを排除した低電力・低発熱量の製品。Macintosh LCシリーズなどに採用されました。
68EC040: FPUとMMUを排除した組み込みコントローラ用途の製品。

主な使用例

コモドール Amiga
Apple Macintosh
パイオニア MPC-LX100
NeXTコンピュータ NeXTcube, NeXTstation
その他のワークステーション
サーブ 39 グリペンのフライ・バイ・ワイヤ制御システム
タイトーのサイドバイサイドのゲーム筐体のシステム基盤

参考文献

この記事は2008年11月1日以前にFree On-line Dictionary of Computingから取得した項目の資料を元に、GFDL バージョン1.3以降の「RELICENSING」(再ライセンス) 条件に基づいて組み込まれています。

脚注

外部リンク

MC68040 Product Summary Page
MC68040V Third-Generation 32-Bit Low-Power Microprocessor (PDF)
M68040 Microprocessors User's Manual (PDF)

もう一度検索