F-106 (航空機)

F-106デルタダート

F-106は、アメリカ合衆国のジェネラル・ダイナミクス社が開発した戦闘機で、公式には「デルタダート」と呼ばれます。1956年に初飛行を果たし、その後アメリカ空軍のADC（防空軍団）による要撃機として広く運用されました。この機体の設計は、東西冷戦時代のアメリカ本土をソビエト連邦の爆撃機から防ぐために必要とされる新たな防空システムに基づいています。

開発の背景

第二次世界大戦の終息後、冷戦が始まるとアメリカは、ソビエトの航空脅威に対抗するために新しい防空戦闘機の開発を急ぎます。電子機器メーカーや航空機メーカーに対して、戦闘機用の電子制御システムや迎撃機の開発を提案しました。これにより、ヒューズ・エアクラフト社のMX1179システムを採用し、コンベア社のYF-102案が正式に採用されます。

YF-102は量産型としてF-102「デルタダガー」として制式化される予定でしたが、開発段階で問題が発生し、早期の兵力展開が困難に。そこで、F-102を基にした改良型F-102Bの開発を決定し、最終的にはF-106Aと改称されました。この新機体は、マッハ2以上の速度と21,300メートルの上昇限界、378キロメートルの戦闘行動半径など、過酷な要求性能を満たす必要がありました。

量産と試験

F-106Aの初号機は1956年に製造され、しばらくの間試験飛行が行われましたが、最初は期待された性能を達成できませんでした。特に最大速度がマッハ1.9であることがわかり、技術者はエアインテークの設計に手を入れることによって改善を図ります。これにより機体性能は向上し、量産型としての課題をクリアしました。

1957年には複座型のF-106Bが開発され、実用戦闘機と練習機の機能を持つ形式として運用可能となりました。

特徴的な機体設計

F-106は無尾翼デルタ翼型の設計を採用し、主翼のエレボンによって昇降と横方向の操作が同時に行えるようになっています。エリアルール設計を活かして空気抵抗を抑えた流線型の形状が特徴です。また、MA-1AWCSという先進的な自動兵装管制システムを搭載しており、より高精度な迎撃が可能です。

運用と配備

1959年にF-106Aは初めての実戦部隊に配備され、1960年代の初めには合計21の航空隊で運用されるようになりました。しかし開発の遅れから、初期機体の多くが未完成のまま配備され、多くの問題が表面化しました。これに対処するため、多数の改修計画が発動し、後には性能向上を目的とした改善が続けられました。

退役と後継機

F-106は1979年の防空軍団解体に伴い、戦術航空軍団や州兵に移管されることになりました。1987年にグリフィス空軍基地の第49戦闘迎撃飛行隊が閉隊されると、実戦部隊から完全に退役しました。後継機には新たにF-15戦闘機が任命され、F-106はその任務を終えました。退役後は無人標的機QF-106として運用され、1998年に最後の飛行が行われました。

F-106は実戦では米本土を防衛する機会はなかったものの、後の訓練用にベトナム戦争に派遣されたF-4の仮想敵機として利用されるなど、その技術は評価され続けました。

機体の仕様

総じて、F-106は先進的な設計と高度な自動化機能を持っており、冷戦時代の航空戦力として重要な役割を果たしました。

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