エレボン

エレボンの概要

エレボン（elevon）またはテールロン（taileron）は、航空機における特定の動翼の一つであり、操縦性能を向上させるために設計されています。この動翼は、無尾翼機（水平尾翼を持たない航空機）に使用されることが多く、補助翼（ailerons）と昇降舵（elevators）の機能を合わせ持つ存在です。

この名称は、「elevation」と「aileron」から派生した造語であり、主翼の後縁に取り付けられています。特に興味深いのは、エレボンが左右の動翼を同じ方向に動かすことでエレベーターとして機能し、逆方向に動かすことでエルロンとして機能する点です。また、両方の機能を同時に使用することも可能であり、その場合は両方向を合成した動きが求められます。

歴史と発展

エレボンの概念自体は、第二次世界大戦前から知られており、ドイツのホルテン Ho229やアメリカのノースロップ N-1Mなど、初期の全翼機に既に採用されていました。この技術は、航空機の設計において重要な進展を示しています。

エレボンを搭載した航空機

エレボンを利用した最初の実用機の一つは、イギリス空軍の戦略爆撃機アブロ バルカンに見ることができます。最初のモデルであるバルカンB.1にはエレボンが装備されていませんでしたが、バルカンB.2の設計改善により、従来のエレベーターとエルロンが8本のエレボンに置き換えられました。これにより、飛行制御の性能が向上しました。

また、アメリカ空軍が運用した迎撃機であるコンベアF-102デルタダガーもエレボンを採用した初期の例です。この機体の導入に続いて、コンベアは超音速戦略爆撃機B-58ハスラーにもエレボンを装備しました。

特徴と運用上の利点

伝統的な無尾翼デルタ機において、主翼後縁にフラップを設置できないため、離着陸時に機首が上がる傾向があります。この時、エレボンを上げ舵に設定すると揚力が減少するという短所がありました。これに対抗すべく、ミラージュ2000では静的安定性の緩和技術とフライ・バイ・ワイヤを導入し、エレボンを下げ舵に設定しても機首上げが可能という大きな進展を遂げました。

さらに、カナード（先尾翼）を設置することで、デルタ翼機の失速特性や機首上げのモーメントも改善されました。代表的な例には、ミラージュミランやクフィールがあり、カナード付きデルタ翼機がこの分野での革新をリードしています。

関連項目

• - エルロン
• - フラッペロン
• - スポイレロン
• - スタビライザー
• - スタビレーター
• - カナード
• - 補助翼
• - デルタ翼
• - 全翼機

参考文献

• - 「ラジコン技術」No.635（電波実験社）2005年8月号 P.152〜P.159

エレボンは、航空機の制御における重要な技術であり、無尾翼機のデザインと運用において革新をもたらしました。

もう一度検索