FMRシリーズ

FMRシリーズ

FMRシリーズは、富士通が開発・販売した独自のアーキテクチャに基づくビジネス向けパーソナルコンピューターのブランド名です。

概要と歴史

1987年2月に、先行するビジネスPCであるFM-16βの後継機種として登場しました。当時の日本のPC市場において、ビジネス用途で高いシェアを誇っていた他社製品に対抗するため、富士通の主力ビジネスPCとして展開されました。FMRシリーズは長らく販売が続けられ、1993年にDOS/V|DOS_V機であるFMVシリーズが登場しラインナップが縮小された後も併売され、最終機種は1998年まで生産されていました。

技術的特徴

本シリーズは、FM-16βから引き継ぐ形でx86系CPUを主要コンポーネントとして採用しました。標準搭載OSはMS-DOS系で、特にメモリ空間においては、当時の他の多くの機種で上限とされていた640KBを上回る768KBの連続領域を確保できる特徴を持っていました。また、標準OSのMS-DOS以外にも、OS/2やMicrosoft Windows 3.xといったOSの動作に対応しており、一部機種ではWindows 95も移植されています。

FMRシリーズの大きな特長として、複数の異なるOSをそれぞれのパーティションにインストールし、起動時に選択できるマルチブート機能を標準で備えていた点が挙げられます。加えて、SCSI接続されたハードディスクドライブ間であれば、任意のパーティションの複製を容易に行うことが可能でした。

日本語処理においては、同社のワープロ専用機OASYSで高い評価を得ていたかな漢字変換機能「OAK」が全機種に採用されていました。また、ソフトウェア開発支援ツールなども充実させ、ビジネス用途での利用を強力にサポートしていました。

市場での展開と影響

当時の日本のビジネスPC市場は、日本電気（NEC）のPC-9800シリーズが圧倒的な強さを持っていましたが、FMRシリーズは独自の機能やビジネス市場への積極的なアプローチにより、一定の地位を築きました。特に官公庁や教育機関、金融機関などにおいては、PC-9800シリーズに次ぐシェアを確保していました。富士通の大型汎用機やスーパーコンピューターの端末（F6680互換エミュレータ）としても多数が導入されたほか、銀行のファームバンキング端末、チケットセゾンの店頭端末、さらには家庭用ゲーム機の開発機として利用された事例も知られています。

また、松下電器産業（現パナソニック）のビジネスPCであるPanacom Mシリーズは、FMRシリーズのOEM供給を受けていました。

シリーズ展開

FMRシリーズは多様なモデルを展開しましたが、シリーズ間のハードウェア的な差異はOSのシステムコールであるFBIOSによって吸収され、ソフトウェア互換性が保たれていました。主なシリーズとしては以下のようなものがありました。

FMR-30系: 液晶一体型の省スペースデスクトップ。モノクロ2階調（640×400ドット）表示が基本で、キーボードを本体前面に収納できるトランスポータブルタイプも登場しました。FMR-30BX、FMR-30HXなどがあります。
FMR-50系: FMRシリーズの中核を担った系列で、640×400ドットのグラフィック表示に対応しました。デスクトップ型を始め、ラップトップ型、ノートブック型、そして超軽量のFMR-CARD系など、様々な筐体で展開されました。富士通のマルチメディアパソコンFM TOWNSシリーズも、ソフトウェアエミュレーションにより本系列との互換性を持っていました。
FMR-60/70/80系: より高精細な1120×750ドット表示に対応したハイレゾリューション系列で、「24ドット機」とも呼ばれました。CPUの進化（80286→80386→80486）に合わせてシリーズ名がFMR-60→FMR-70→FMR-80と変更されました。
FMR-CARD系: FMR-50系から派生した、当時としては画期的な990gという軽量と単三乾電池による長時間駆動を実現したモバイルPCです。ROMに基本システムや漢字変換辞書を内蔵し、外部記憶媒体としてはICカードスロットを搭載していました。
FMR-250/280系: FMR-50系およびFMR-60/70/80系をベースに、Windows環境での性能向上を目指しグラフィックアクセラレーターを搭載した系列です。FMR-280A4/L4がシリーズ最終機種の一つとなりました。
FMサーバ: FMRシリーズの名称を冠していましたが、従来の独自アーキテクチャとは異なり、1990年代初頭にPC/AT互換のEISAバス対応PCサーバとして展開されました。FMR-340SVやFM-360SVなどがあり、ネットワークOSやWindows NTに対応し、後のGRANPOWERシリーズへと繋がりました。

FMRシリーズは、富士通が独自路線で日本のビジネスPC市場に挑んだ製品群として、その後のPC事業の礎を築きました。

関連事項

FM TOWNS

外部リンク

eFMR-50 - FMR-50 エミュレータ

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