FN P90

FN P90（ファブリックナショナルプロジェクトナインティー）は、ベルギーのFN社が開発したPDW（Personal Defence Weapon：個人防衛火器）であり、短機関銃の一種として分類されることもあります。人間工学に基づいた設計が特徴です。

概要

P90は、従来の短機関銃とは異なり、拳銃弾ではなく、小型ライフル弾のような形状の専用5.7x28mm弾を使用します。1980年代末に新しい形態の火器として開発され、PDWという分類で発表されました。

当初は、自動小銃などを標準装備しない兵士が自衛のために使用することを想定していましたが、冷戦終結後に対テロ戦争が増加し、近距離での戦闘に適した火器の需要が高まったため、建物などの閉鎖空間で活動する特殊部隊用の火器として注目されるようになりました。

PDWという概念が浸透していないため、短機関銃の一種として分類されることもありますが、現在ではメーカー自身もサブマシンガン（短機関銃）と呼んでいます。

プロトタイプは、製品版のブルパップ方式とは異なり、大型のトリガーとグリップが銃身の真後ろに位置する特徴的な形状をしていました。弾倉と装填方式は製品版と共通しています。

特徴

P90は、機関部がグリップと引き金より後方に位置するブルパップ方式を採用しており、全長に占める銃身が長く、集弾性に貢献しています。

半透明プラスチック製の弾倉を銃の上に平行に装着し、弾薬は銃に対して横向きに保持され、装填直前に90度回転して前方を向きます。これにより、短機関銃としては多い50発の装弾数を実現していますが、従来の火器とは位置や取り付け動作が大きく異なり、迅速な弾倉交換には熟練を要します。後発のH&K MP7のように、銃の下面から縦に弾倉を挿す構造のものが多いです。

左右持ち替えを考慮し、チャージングハンドルとセレクターレバーはどちらからでも操作できるようになっています。マガジンキャッチや非常用照準器も同様です。また、排莢は本体下部にある排莢口から下に向けて行われます。射手の利き手を選ばない利点がある一方で、空薬莢が射手の足元に落ちて転倒を誘発する可能性もあります。

円盤形のセレクターレバーを水平に回転させて、安全、セミオート、フルオートを切り替えます。フルオートに切り替えた状態でも、引き金を浅く引けば単発射撃で止まり、深く引き切るとフルオート射撃になります。機関部ユニットは銃の最後尾に内蔵され、ハンマーやシアーなどほとんどの部品が強化プラスチック製です。

一般的なP90のモデルはドットサイトが標準装備されていますが、ドットサイトの代わりに上部にピカティニー・レールがついたTRモデルや、ドットサイトを標準装備しているが側面にはピカティニー・レールが装着されているモデルも存在します。ドットサイト取り付け部の左右には簡素な非常用照準器が設けられています。

弾薬

P90は、既存の短機関銃のような拳銃弾ではなく、新規開発された5.7x28mm弾を使用します。この弾薬は、弾頭先端が尖ったボトルネック構造で、小銃用実包をそのまま縮小したような形状をしています。同じ弾薬を使用する拳銃として、FN Five-seveNが製造されています。

5.7x28mm弾は小口径で弾頭も軽量なため、単純な破壊力はライフル用弾薬に劣りますが、初速が高く運動エネルギーを狭い範囲に集中させることから、剛体に対してはライフル弾並みの貫通力を発揮し、150メートル先のボディアーマーを貫通します。

人体などの軟体に着弾した場合は、内部で弾頭が乱回転して貫通せずに周辺の組織を大きく破壊するため、ストッピングパワーに優れるとされています。目標内で弾丸が停止することは、跳弾や貫通弾による二次被害防止に繋がります。

弾薬の火薬量は拳銃並みであり、弾頭重量の軽さから反動は少なく、FN社は9x19mmパラベラム弾薬の60%程度まで反動を軽減したとしています。

実績

在ペルー日本大使公邸占拠事件において、ペルー軍突入部隊の一部がP90を使用しました。これは、FN社から宣伝用に無償提供されたものと言われています。この事件の中継の際に本銃が映り、有名になりました。

バリエーション

FN PS90H: フルオート機能を排除し、発射速度の抑制と、弾丸の貫通力を下げたP90の民間モデルです。

採用国

（省略）

登場作品

P90はその特徴的な形状から多くのゲームやアニメに登場しており、最も知名度の高い短機関銃の一つとなっています。

関連項目

時代別短機関銃・PDW等一覧
短機関銃
PDW
H&K MP7
FNハースタル
FN Five-seveN
5.7x28mm弾

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