ボディアーマー

ボディーアーマー（防弾チョッキ）とは

ボディーアーマーは、銃弾や爆発物の破片などから身体を保護するために着用される防護服です。フラックジャケット、バリスティックベスト、ブリットプルーフベストなどとも呼ばれます。日本では、防弾チョッキ、防弾ベスト、防弾衣など、様々な名称で呼ばれています。

ボディーアーマーの概要

ボディーアーマーは、その素材によって防護性能が大きく異なります。拳銃弾や砲弾の破片程度の防御力を持つものから、装甲を貫通する小銃用の徹甲弾（AP弾）を止めることができるものまで存在します。近年では、セラミックプレートを内蔵し、アサルトライフルなどの小銃弾を防ぐことができるボディーアーマーが主流です。

歴史

ボディーアーマーの歴史は古く、中世の時代から絹織物や綿を詰めた鎧が使用されてきました。これらの素材は、矢や初期の火器に対して一定の防御効果を発揮しました。しかし、マスケット銃などの強力な銃器が登場すると、鉄製の鎧も簡単に貫通されるようになり、鎧職人たちはより強固な鎧の開発に挑みました。

19世紀

19世紀には、絹が防弾効果を持つことが発見され、絹製のベストが試作されました。その後、ポーランドの発明家カシミール・ゼグレンによって、より薄く軽量な絹製防弾ベストが開発され、実演によってその効果が証明されました。第一次世界大戦では、初期のボディーアーマーが一部の精鋭部隊に採用されましたが、防御力と重量のバランスが悪く、普及には至りませんでした。

20世紀

第二次世界大戦では、鋼鉄製のボディーアーマーが一部で使用されましたが、重量が重く、跳弾の危険性もあったため、広くは採用されませんでした。一方で、イギリス軍が開発したナイロン製の対砲弾片用フラックジャケットは、その後のボディーアーマー開発に大きな影響を与えました。朝鮮戦争では、アメリカ海兵隊がナイロン製のボディーアーマーを採用し、死傷者の減少に貢献しました。

1960年代には、世界初の小銃弾阻止可能なボディーアーマーが開発され、ヘリコプターの搭乗員などに配備されました。
1980年代には、アラミド繊維であるケブラーが防弾材として採用され、軽量で防弾性能の高いボディーアーマーが登場しました。ケブラーは、鋼鉄の数倍の強度を持ち、熱にも強く、加工が容易であるという利点がありましたが、小銃弾や刃物への対策は不十分でした。

21世紀

21世紀に入ると、セラミックプレートを内蔵したボディーアーマーが一般的になり、小銃弾への防御性能が向上しました。また、PALSウェビングが縫い付けられたボディーアーマーが登場し、装備の自由度が向上しました。アフガニスタンやイラクでの対テロ戦争では、IED（即席[[爆発装置]]）による攻撃が多発し、ボディーアーマーの更なる改善が求められ、より強力な防弾プレートが開発されました。

近年では、より軽量で動きやすいプレートキャリアが普及し、軍や警察だけでなく、民間でも自己防衛のために使用されるようになりました。

日本での利用

日本では、自衛官、警察官、海上保安官、現金輸送の警備員、機械警備の警備員などがボディーアーマーを着用することがあります。一般の民間人にはほとんど普及していませんが、防刃機能のみを備えた軽量なボディーアーマーが利用されることもあります。これは、日本では銃器犯罪が少ないことが理由として挙げられます。

ボディーアーマーの規格

ボディーアーマーの防御性能は、NIJ規格によってランク付けされています。この規格では、防弾性能だけでなく、被弾時の凹み（BFS）も基準として定められています。ただし、NIJ規格はアメリカの規格であり、トカレフ弾など一部の弾薬には対応していません。

素材

ボディーアーマーの主な素材には、以下のようなものがあります。

アラミド繊維（ケブラーなど）: 軽量で強度が高く、拳銃弾を防ぐのに適しています。しかし、小銃弾や刃物には弱く、水に濡れると性能が低下するという欠点があります。
超高分子量ポリエチレン繊維（ダイニーマ、スペクトラなど）: アラミド繊維よりも強度が高く、水に強く、軽量で水に浮くという利点がありますが、熱に弱いという欠点があります。また、加工方法によっては、小銃弾を阻止できるトラウマプレートとしても使用できます。
セラミック: 小銃弾を阻止するのに適していますが、重く、衝撃に弱いという欠点があります。通常、アラミド繊維や超高分子量ポリエチレン繊維と組み合わせて使用されます。
金属（鋼鉄、チタンなど）: 古くから使用されてきた素材で、劣化しにくいという利点がありますが、重く、跳弾の危険性があるという欠点があります。

ボディーアーマーの弱点

ボディーアーマーは、身体全体を完全に保護できるわけではありません。首や脇の下、股間など、防御されていない部分に破片が命中すると、致命傷や重傷に至る可能性があります。また、たとえ弾丸がボディーアーマーで止まったとしても、着弾時の衝撃が体に伝わり、アザや打撲、骨折、内臓破裂などの怪我を負うことがあります。そのため、ボディーアーマーを過信せずに、常に危険を意識することが重要です。

ボディーアーマーの運用上の注意点

化学繊維製のボディーアーマーは、経年劣化するため、3年程度で交換する必要があります。
一度でも被弾したボディーアーマーは、交換する必要があります。
ボディーアーマーの下に硬い物を入れると、被弾時に怪我をする危険性があります。
ボディーアーマーは、防水加工が施されていますが、通気性が悪いため、夏場は蒸れやすく、体力を消耗しやすいというデメリットがあります。

その他

ボディーアーマーは、軍用犬などの動物用も開発されています。また、パワードスーツなど、防弾服の技術を応用した新しい装備の研究も進められています。

脚注

（略）