FPU (放送)

FPU：テレビ放送の中継を支える無線伝送システム

FPU（Field Pickup Unit）は、テレビ放送において、放送局外の現場からスタジオへ映像や音声素材を無線で伝送する中継装置です。一般的にはマイクロ波回線、またはUHF帯を用いて、報道番組やスポーツ中継など、様々な場面で活躍しています。マラソンや駅伝の中継では、広範囲にわたる中継ポイントをカバーするため、数十台から百台以上のFPUが同時に使用されることもあります。

FPUの仕組み

FPUは、一般的に送信機と受信機、それぞれにパラボラアンテナと制御部が一体となった4つの筐体で構成されています。送信機は現場に設置され、高感度のパラボラアンテナや八木・宇田アンテナを使用して電波を送信します。受信機は放送局、あるいは中継拠点に設置され、送信された電波を受信します。送信機と受信機間は、見通しの良い場所に設置する必要があります。見通せない場合は、中継地点となる山や鉄塔などに中継装置を設置し、中継を行うこともあります。

送信機と受信機の高周波部は、制御部と高周波用同軸ケーブルで接続され、映像・音声信号は中間周波数に変換されて伝送されます。電源も同軸ケーブルを介して供給されます。UHF帯を使用する場合、アンテナサイズが大きくなるため、伝送損失を少なくするために、高周波部はアンテナに近接して設置され、制御部は離れた場所に設置されることもあります。

かつては、パラボラアンテナの向きを正確に調整するために熟練したオペレーター（マイクロマン）が必要とされていましたが、近年ではデジタル変調技術の進歩により、無指向性アンテナを用いた複数の受信基地への伝送が可能になり、無人化が進んでいます。

FPUの伝送方式

FPUには、アナログ方式（FM方式）とデジタル方式があります。デジタル方式は、シングルキャリアのQAM方式と、マルチキャリアのOFDM方式があります。OFDM方式は、多くの搬送波を高密度に配置することで、高い伝送効率を実現しています。

使用周波数帯

日本では、FPUにはUHF帯とSHF帯の特定周波数が割り当てられています。具体的には、1.2GHz帯、2.3GHz帯、Bバンド、Cバンド、Dバンド、Eバンド、Fバンド、Gバンドなどが使用されています。これらの周波数帯は、携帯電話などの他の無線サービスとの周波数競合を避けるため、厳格に管理されています。特に、800MHz帯は携帯電話への転用が進み、放送業務での使用は終了しています。

FPUと関連技術

FPUは、STL（Studio Transmitter Link）、TSL（Transmitter Studio Link）、TTL（Transmitter to Transmitter Link）などの、放送局内外の無線伝送システムと密接に関連しています。また、NTTなどの通信事業者の中継回線システムとも連携し、広範囲にわたる放送中継を実現しています。

FPUの将来展望

FPUは、今後も放送技術の進化に伴い、さらなる高効率化、高信頼性化、そして小型化が期待されます。5GやBeyond 5Gといった次世代無線通信技術の活用も検討されており、より高品質な映像・音声伝送を実現する可能性があります。無人化・自動化技術の進展も、運用コスト削減に大きく貢献すると考えられます。

まとめ

FPUは、テレビ放送の中継において不可欠な技術であり、今後もその重要性はますます高まると考えられます。技術革新を背景に、より高機能で信頼性の高いシステムが開発され、放送の質向上に貢献していくでしょう。

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