FRIENDS (長渕剛のアルバム)

長渕剛21作目のオリジナルアルバム『FRIENDS』：友情をテーマにした力作

2009年 8月12日、長渕剛の21枚目のオリジナルアルバム『FRIENDS』がリリースされました。ユニバーサルミュージック傘下のナユタウェイヴレコーズへの移籍第一弾作品ということもあり、大きな注目を集めました。前作から約2年3ヶ月ぶりのリリースとなった本作は、作詞・作曲・プロデュースを長渕剛自身が行い、彼の音楽的才能が余すことなく発揮されています。

アルバム制作の背景

このアルバムの制作に至るまでには、いくつかの重要な出来事がありました。2008年には2枚のベストアルバムをリリースした後、清原和博選手の引退セレモニーで「とんぼ」を演奏。この演奏をきっかけに、過去のアルバムの売上が伸びるという現象も起きました。また、日本テレビの番組企画で描いた「不動明王」の絵が800万円で落札されるなど、精力的な活動が続いていました。

2009年1月には、NHKの番組「課外授業ようこそ先輩」で母校である鹿児島県立鹿児島南高等学校で3日間の授業を行い、そこで生まれた楽曲「卒業」が、本作の先行シングルとしてリリースされました。同年1月、長渕剛は11年間所属したレコード会社を離れ、ユニバーサルミュージックに移籍。この「卒業」は移籍第一弾シングルとして発表され、大きな話題となりました。その後、2枚目の先行シングル「蝉 semi」もリリース。ミュージックビデオでは、長年続けてきた詩画の実演シーンが初めて収録され、新たな一面を見せました。

録音と参加ミュージシャン

レコーディングは複数のスタジオで行われ、ミキシングには前作に引き続きブライアン・シューブルが参加しました。プロデュースは長渕剛自身が行い、上田ケンジ（元the pillowsのベーシスト）も制作に携わっています。

アルバムには、多くのミュージシャンが参加。ドラムスには大久保敦夫、岡本郭男、島村英二、ベースには上田健司、岡沢章、川嶋一久など、実力派ミュージシャンが名を連ねています。ギター、キーボード、パーカッション、ストリングス、バッキングボーカルなど、多彩な楽器とコーラスが楽曲に深みを与えています。

音楽性とテーマ

音楽評論家からは、本作のテーマについて様々な解釈が提示されています。アルバムタイトルは『FRIENDS』ですが、「同志」をテーマに、共に苦労を分かち合う仲間への連帯を呼びかける内容と評する声もあれば、友情を改めてテーマに据え、長渕剛の代表作『勇次』に匹敵する名曲が収録されていると評価する声もあります。「蝉 semi」は怒りの叫びを表現した迫力ある楽曲と高く評価されています。また、東京を舞台にした楽曲では、かつて対立していた東京に対して、感謝の念を抱くようになった長渕剛の心情が表現されていると指摘されています。ラップを取り入れた楽曲や、個と集合の歌など、従来の長渕剛のイメージにとらわれない様々な表現方法も試みられています。

リリースとプロモーション

『FRIENDS』は2009年 8月12日にリリースされ、初回限定盤には「卒業」と「蝉 semi」のPVを収録したDVDが付属しました。リリースにあたり、ラジオ番組の公開収録や、テレビ番組への出演など、精力的なプロモーション活動が行われました。詩画の実演パフォーマンスや、様々な楽曲の演奏を通じて、アルバムの魅力を広く伝えました。また、清原和博氏をゲストに迎えたテレビ出演も話題となりました。

コンサートツアー

アルバムリリース後には、「2009 TSUYOSHI NAGABUCHI ARENA TOUR FRIENDS」と題したアリーナツアーが開催され、全国6都市10公演が行われました。さらに同年にはデビュー30周年を記念したアコースティックライブツアーも行われ、全国13都市20公演を開催。年末にはカウントダウンライブも行われ、その模様はDVDとCDのボックスセットとしてリリースされました。

批評家の評価

音楽情報サイトや文芸雑誌などでは、本作は肯定的な評価を受けています。「長渕剛の魅力である、ぶっきらぼうな優しさや、饒舌の裏の寡黙さ、危うさと安心感などが凝縮されている」と絶賛する声や、「ポピュラリティーの高さでは、これまでのアルバムの中でも3本の指に入る」と高く評価する声もありました。また、「名曲ぞろい」と評する声も多く、音楽的完成度の高さが認められています。

チャート成績

オリコンチャートでは最高位2位を獲得し、12週に渡ってランクイン。11.1万枚のセールスを記録するなど、商業的にも大きな成功を収めました。

収録曲とスタッフ

アルバムには、先行シングル曲の他、多くのオリジナル曲が収録されています。また、多数のミュージシャン、エンジニア、スタッフが制作に関わっており、その規模の大きさがうかがえます。

『FRIENDS』は、長渕剛の音楽家としてのキャリアにおいて重要な位置を占める作品であり、彼の音楽性と人間性の深さを改めて感じさせる、聴き応えのあるアルバムと言えるでしょう。

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