Formula One

フォーミュラ・ワン：ソニーが贈ったリアルなF1レースゲームの世界

ソニー・コンピュータエンタテインメント（SCE）によって開発・発売された『フォーミュラ・ワン』（Formula One、Formula 1）シリーズは、世界中のF1ファンを魅了したレースゲームとして知られています。1996年に初代作品が発売されて以来、ほぼ毎年新作がリリースされ、長きに渡り人気を博しました。

シリーズの特徴は、そのリアルな再現性です。各作品には、実際のF1マシン、ドライバー、サーキットデータが忠実に反映されており、プレイヤーはあたかも本物のF1ドライバーになったかのような臨場感を味わうことができました。特に初期の作品は外部スタジオが開発を担当していましたが、2001年以降はSCEスタジオ・リバプール（2012年閉鎖）が開発の中心を担うようになり、一貫性のある高いクオリティが保たれました。

ゲームの発売時期は、欧州では夏から秋頃が一般的でした。そのため、収録されているマシンやドライバーは、その年のF1シーズンの開幕時点の情報に基づいていることがほとんどです。しかし、『Formula One Championship Edition』のように、シーズン途中時点のデータが使用されているケースもありました。また、ドライバーの変更などがシーズン中に発生した場合は、変更前のドライバー情報も併記されるなど、細部へのこだわりが伺えます。

さらに、ゲームにおける実況・解説にも工夫が凝らされていました。欧州版では、BBCやITVでF1中継の実況を担当していたマレー・ウォーカー氏が長年起用され、高い評価を得ました。一方、日本版では、フジテレビのF1中継をベースとしており、三宅正治氏、長坂哲夫氏、塩原恒夫氏といったベテラン実況アナウンサーと、今宮純氏、川井一仁氏といった解説者たちが、リアルな臨場感をゲームに提供しました。

しかし、2007年、フォーミュラ・ワン・マネージメント（FOM）とSCEE間の独占契約が終了し、SCEによる『フォーミュラ・ワン』シリーズは『Formula One 2006』/『Formula One Championship Edition』をもって幕を閉じました。長年に渡り多くのファンを魅了した名作シリーズの終焉は、多くのF1ゲームファンに惜しまれました。

その後、2008年にはコードマスターズがF1ゲームの独占ライセンスを獲得し、新たなシリーズがスタートしました。そして、2021年にはエレクトロニック・アーツ（EA）がコードマスターズを買収し、現在ではEAがF1ゲームの開発・発売を行っています。

SCE版『フォーミュラ・ワン』シリーズは、そのリアルなゲーム性と、実況・解説陣の起用など、数々の工夫によって、多くのファンを獲得しました。F1ゲーム史において、重要な位置を占める作品群と言えるでしょう。現在ではプレイすることが困難な作品も多いですが、当時のゲーム体験を懐かしむファンは少なくありません。このシリーズは、F1ゲームというジャンルを確立する上で、大きな役割を果たしたと言えるでしょう。当時、プレイしたユーザーにとって、忘れがたい思い出のゲームの一つとなっているはずです。

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