GHOST SOUP

『GHOST SOUP』は、映像作家として知られる岩井俊二が脚本と監督を務めたテレビドラマ作品です。1992年12月21日深夜にフジテレビ系列の放送枠『La cuisine』（ラ・キュイジーヌ）内で放映されました。テレビ放送版に加え、後に未放送シーンを追加して再編集された完全版がソフトとしてリリースされ、より作品世界を深く楽しむことが可能となりました。

物語の舞台はクリスマスの喧騒が近づくある街。主人公の鈴木一郎は、友人の事情により当初の予定よりも約1ヶ月も早く、よりによってクリスマスイヴの日に引越しをすることになります。新たな生活への期待と、期せずして慌ただしくなった日程への戸惑いを胸に、彼は真新しい（彼にとっての）部屋へ荷物を運び入れます。

しかし、引越しを終えて一息つく間もなく、一郎の部屋には次々と不審な、あるいは迷惑な訪問者たちが押し寄せてきます。新聞の勧誘員、集金人、さらには宗教団体の関係者までが現れ、一郎は辟易とさせられます。そうした騒ぎの中、特に異様なオーラを放つ二人組が彼の部屋を訪れます。それは、幼さの残る不思議な雰囲気の少女ナナと、どこか怪しげな外国人マールでした。

一郎は彼らを他の訪問者同様に追い返そうとしますが、二人組は驚くべき要求を突きつけます。彼らは当然のように「今晩、ここでクリスマスパーティーを開く予定なので、あなたに出て行ってもらいたい」と主張するのです。自分こそが正当な部屋の借り主である一郎は、彼らのあまりに勝手な言い分に激しく憤慨し、何とかして二人を部屋から追い出そうと試みます。一度は彼らを退けることに成功した一郎でしたが、ナナとマールは簡単には諦めません。彼らは一郎を部屋から追い出すための、さらに突飛で奇妙な計画を実行に移し始めるのです。

この作品は、日常の中に突如として現れる非現実的な出来事と、それに振り回される主人公の姿を、岩井俊二監督ならではの独特な映像感覚とシュールなコメディタッチで描いています。予測不能な展開と、個性的な登場人物たちが織りなすユーモラスなやり取りが見どころです。

キャストには、主人公・一郎を渡裕行が演じ、一郎を困惑させるナナ役には鈴木蘭々、マール役にはデーブ・スペクターという意外な配役がされています。また、脇を固める俳優陣も個性的で、坂田一等兵役の光石研、管理人役の藤田弓子、集金のおじさん役の高田純次など、物語に深みと面白さを加えています。

スタッフは、脚本と監督を岩井俊二自身が担当し、プロデューサーを原田泉が務めています。助監督には後に映画監督として活躍する行定勲が名を連ねている点も特筆されます。撮影は金谷宏二、照明は隅田浩行、音楽は土井宏紀と鈴木慶一が担当し、作品の独特な雰囲気を効果的に作り出しています。エンディングテーマには、鈴木結女の楽曲「CLOSE TO YOU」が使用されました。

本作が放送された『La cuisine』枠は、岩井俊二がテレビドラマ黎明期に実験的な作品を発表した場であり、彼の他の代表作の一つである『FRIED DRAGON FISH』もこの枠で放送されています。

もう一度検索