GMクルーズ

GMクルーズ：自動運転技術の最前線と課題

GMクルーズ（GM Cruise Holdings LLC）は、ゼネラルモーターズ（GM）の自動運転車開発部門であり、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置いています。元々はクルーズオートメーションという企業が母体となっており、自動運転技術のパイオニアとして業界を牽引してきました。現在、GMはクルーズの株式上場やスピンオフの可能性を検討しており、今後の動向が注目されています。

創業と初期の開発

クルーズは、Justin.tvとTwitchの共同創業者であるカイル・ボークトによって設立されました。当初は、既存の自動車に自動ブレーキや車線維持などのオートパイロット機能を後付けするキットを開発していました。2015年には、レベル2の半自動運転キット「Cruise RP-1」を限定販売し、アウディA4やS4にミリ波レーダーやステレオカメラなどのセンサーを搭載して高速道路での半自動運転を実現しました。

GMによる買収と開発の加速

2016年3月、GMは5億8,100万ドルでクルーズを買収しました。その後、サンフランシスコ、アリゾナ州などでシボレー・ボルトEVを用いた公道走行試験を開始し、自動運転技術の開発を加速させました。2017年には、130台の量産に成功し、世界初の量産可能な自動運転車としてシボレー・ボルトEVベースの車両を発表しました。これらの車両はレベル3の自動運転技術を搭載し、サンフランシスコ、フェニックス、デトロイトで公道試験走行が行われました。

公道実験と事故

クルーズの公道実験は、運転席と助手席に2名が乗車した状態で行われ、時速25km～30km程度で走行しています。2017年には21件の事故に関与しましたが、その多くは自動運転車の急ブレーキによる追突事故や、人間側の過失によるものでした。2018年にはニューヨークでも自動運転車の実験を開始しました。

クルーズAV：レベル4自動運転車の開発

2018年1月、GMはレベル4の自動運転車「クルーズAV」を2019年までに生産する準備が整ったと発表しました。「クルーズAV」は、ステアリングホイールやペダルなどの運転操作に必要な部品を搭載せず、LIDAR、ミリ波レーダー、カメラなどのセンサーを多数搭載しています。これにより、車両周囲の状況を詳細に把握し、自動運転を実現しています。また、フェール・オペレーショナルに対応しており、制御回路の一部が破損しても安定走行を維持できます。

ライドシェアサービスとの連携

クルーズは、ライドシェアアプリのLyftと提携し、自動運転EVを用いたライドシェアサービスの実験を行っています。また、従業員向けの配車サービスアプリ「Cruise Anywhere」も開発し、テスト運用を開始しました。2017年には、複数の都市で無人タクシーサービスを開始する計画を発表しました。これらの車両は、ミシガン州のオリオン工場で生産されたシボレー・ボルトEVが使用されています。

ソフトバンクグループとの提携

2018年5月、GMはソフトバンクグループとの提携を発表し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから22億5,000万ドルの出資を受け入れました。この提携により、Uberや滴滴出行などのライドシェア大手への車両供給も視野に入れています。

沿革

2013年10月：カイル・ボークトにより設立。
2015年9月：シリーズAラウンドで1,250万ドルを調達。
2015年6月：Audi A4・S4向けの半自動運転システム「Cruise RP-1」を発売。
2016年3月：GMが5億8,100万ドルで買収。
2016年5月：Lyftと自動運転機能付きEVを利用したライドシェア・サービスの実験開始。
2017年4月：GMが開発を加速させるためサンフランシスコの研究施設へ1,400万ドルを投資。
2017年8月：従業員向けに配車アプリ「Cruise Anywhere」を配布。
2017年6月：世界初の「量産型」自動運転車を発表。
2017年10月：GMがLiDER技術のStrobe社を買収。
2017年12月：GMが無人タクシーサービスを始める計画を発表。
2018年5月：GMより11億ドル、ソフトバンク・ビジョン・ファンドより22億5000万ドルを調達し、評価額115億ドルに達する。
2018年10月：ホンダより27.5億ドルを調達し、評価額146億ドルに達する。
2019年5月：GMとソフトバンクビジョンファンド、Tロウ・プライス・アソシエーツ、ホンダより11億5000万ドルを調達し、評価額190億ドルに達する。
2023年10月：クルーズ、GM、ホンダの3社で、日本での自動運転タクシーサービスを2026年初頭に開始するため、合弁会社設立に向けた基本合意書を締結。

不祥事

2023年10月、サンフランシスコでクルーズの自動運転無人タクシーが、ひき逃げ事故を起こし、歩行者を再度轢いてしまうという重大な事故が発生しました。この事故を受けて、カリフォルニア州の規制当局はクルーズの自動運転車が一般市民にとって危険であるとして、営業許可を停止しました。さらに、オースティンやヒューストン、フェニックスでも運行していた無人タクシー事業を全米で中止し、950台の自動運転車をリコールすることを発表しました。

2023年11月、この営業停止処分を受けて、2022年から最高経営責任者を務めてきたカイル・ボークトがCEOを辞任しました。

まとめ

GMクルーズは、自動運転技術の開発において最先端を走ってきましたが、最近では事故や規制当局からの厳しい措置により、大きな転換期を迎えています。今後の動向が注目されます。

外部リンク

* Cruise Automation

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