GOLDEN☆BEST 南沙織 筒美京平を歌う

『GOLDEN☆BEST 南沙織 筒美京平を歌う』は、1970年代を代表する人気アイドル、南沙織（活動後期にはシンシア名義も使用）の楽曲の中から、作曲家・筒美京平の手による作品のみを集めて編纂されたベストアルバムです。2002年6月19日にSony Music House（現在のSony Music Direct）より発売され、規格品番はMHCL-113/4でした。

このアルバムは、様々なレコード会社からシリーズ展開されていた『ゴールデン☆ベスト』において、ソニーミュージック系列からの第一弾としてリリースされたタイトルの一つです。本作最大の特色は、稀代のヒットメーカーである筒美京平が南沙織に提供した楽曲を網羅的に収録している点にあります。

ディスク1とディスク2の前半部には、南沙織あるいはシンシア名義で発表された筒美京平作曲の全シングルA面・B面曲が、発表当時のシングルバージョンで収められています。これによって、彼女のキャリアにおける筒美作品によるシングル曲の変遷を一覧できるようになっています。

特にこのアルバムが注目されたのは、発売当時まだCD化されていなかった楽曲が、合計7曲初めて収録されたことです。これらの未CD化楽曲は、1977年発売のアルバム『午後のシンシア』と、1978年発売のアルバム『Simplicity』に収められていた楽曲群から選ばれています。これらのオリジナルアルバム自体は、数年後の2004年から2005年にかけて、ソニーミュージックの復刻企画「オーダーメイドファクトリー」を通じてアルバム単位での完全なCD化が実現しています。

収録曲を見ると、ディスク1にはデビュー曲「17才」をはじめ、「潮風のメロディ」「純潔」「色づく街」「ひとかけらの純情」「夏の感情」といった、彼女の代表的なシングル曲が数多く収録されています。これらは当時のNHK紅白歌合戦での歌唱曲でもあり、南沙織の初期〜中期のヒット曲が中心です。ディスク2には、活動後期のシングル曲「女性」「ゆれる午後」などに加え、前述の未CD化を含むアルバム収録曲が収められています。収録曲の大半は筒美京平作曲、有馬三恵子作詞ですが、「ひとねむり」（作詞: 落合恵子）、「ファンレター ‐SO GOOD SO NICE‐」（作詞: 阿久悠）、「よろしく哀愁」（作詞: 安井かずみ）といった例外も含まれます。

アルバムのジャケットには、1972年発表のサードシングル「ともだち」のジャケット写真に使われたカットとは別の写真が採用されています。また、歌詞ブックレットには、筒美京平が南沙織に提供した全ての楽曲リストと、それぞれの楽曲がどのオリジナルアルバムに収録されていたかの詳細情報が掲載されており、資料性の高い内容となっています。

発売から7年後の2009年8月19日には、高音質を謳うBlu-spec CDフォーマット盤（MHCL-20072/3）が初回生産限定盤として再リリースされています。

本作は、南沙織の豊富なディスコグラフィーの中から、筒美京平という一人の作曲家に焦点を当てることで、両者のクリエイティブな関係性と、そこで生まれた数々の名曲を改めて評価するための重要な作品と言えるでしょう。南沙織のファンはもちろん、筒美京平作品のファンにとっても、彼女が歌唱した筒美メロディーを網羅的に楽しめる貴重な一枚です。筒美京平作品のみで構成された他のアルバムとしては、『ギフトパック 南沙織』『早春のハーモニー』『20才まえ』『午後のシンシア』『DREAM PRICE 1000 南沙織 17才』『TSU-TSU MIX 南沙織』などが存在します。

このアルバムは、南沙織というアーティストの魅力を語る上で欠かせない筒美京平とのタッグが生んだ成果を、包括的に捉えることができるベストアルバムとして、現在も高い評価を受けています。

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