GSフォーマット

GSフォーマットとは

GSフォーマット（ジーエスフォーマット）は、ローランド社が提唱したMIDIの独自規格です。一般的に、MIDIの統一規格であるGM（General MIDI）をローランドが拡張したものと認識されていますが、実際にはGMよりも先にリリースされました。GSフォーマットは、日本とアメリカのMIDI規格協議会が共同で制定したGM規格の基盤ともなりました。

GSという名称の由来は公式には発表されていませんが、ローランドの50周年記念サイトでは、SC-55が「General Standard MIDI（GS）」と表記されていたことが確認できます。これは、GSフォーマットが、GM規格のベースとなったことを示唆しています。

GS対応音源の変遷

SCシリーズ

GSフォーマットに対応した最初の音源は、1991年にローランドから発売されたSC-55です。この音源は、317種類のPCM音色、16チャンネル、最大同時発音数24音というスペックを持ち、当時としては非常に画期的でした。さらに、ローランドのDTM音源であるCM-64やMT-32との互換性も備えており、爆発的な人気を博しました。

SC-55の登場により、GSフォーマットはローランド独自の規格でありながら、DTM音源の事実上の標準規格となりました。競合他社であるヤマハでさえ、自社製品にGS互換モードを搭載せざるを得なかったほどです。

SC-55mkIIは、SC-55にシリアルポートを追加し、最大同時発音数を28音に、音色数を354種類に増加させました。また、GM規格にも正式に対応し、GSとGMの両規格を代表する音源として広く普及しました。

その後、SC-88が登場し、パート数が32チャンネルに、最大同時発音数が64音に拡張されました。SC-88以降の機種では、音色を拡張するためのSC-88 Mapが導入されています。SC-88VLは、SC-88の廉価版として発売されました。

さらに、パートごとにエフェクトをかけられるインサーションエフェクトを搭載し、1000以上の音色を内蔵したSC-88Pro、最大同時発音数を128音に増やし、USBにも対応したSC-8850と、時代に合わせて上位機種が次々と発表されました。

SDシリーズ

2001年には、SCシリーズの後継としてSD-90が登場しました。このモデルはローランドのXVシリーズと同系列の音源エンジンを搭載し、オーディオ機能が強化されています。GM2、GSに加え、ローランドとヤマハの協力によってXGliteにも正式に対応しています。

SCシリーズは、従来の機種との互換性を維持しながら発展を続けてきましたが、SDシリーズでは仕様が大きく変更され、GSとの互換性はSC-55mkIIと同等レベルに留まりました。SC-88以降に拡張された音色や機能を使用するMIDIデータは、SDシリーズでは正しく再生できない場合があります。

現在のGSフォーマット

2009年現在、GSに対応した音楽制作向け製品としては、2003年に発売されたSD-20のみが現行モデルとなっています。しかし、過去の機種で制作されたGSデータの再生ニーズは依然として高く、現在でも電子ピアノやキーボードなどでGSデータ再生に対応した製品が継続的にリリースされています。

Windows標準のソフトウェア・シンセサイザー「Microsoft GS Wavetable SW Synth」は、GSフォーマットとほぼ互換性があり、SC-33相当の音質で再生できます。また、Appleの「QuickTime」に内蔵されている音源もGSフォーマットに対応しており、どちらの音源もローランドからライセンス供与を受けています。

2015年には、ソフトウェア・シンセサイザーとしてSound Canvas for iOSとSound Canvas VAが発売され、少なくともSC-8820までのデータを再現できるようになりました。

主なGS対応製品

SC-55
SC-55mkII
SC-88
SC-88VL
SC-88Pro
SC-8850
SD-90
SD-20
Microsoft GS Wavetable SW Synth
QuickTime内蔵音源
Sound Canvas for iOS
Sound Canvas VA

参考文献

GSリファレンス・ブック (DTM HANDBOOKS) ISBN 4-8456-0155-9

関連項目

MIDI
デスクトップミュージック
デジタル・オーディオ・ワークステーション
ローランド・SCシリーズ
ローランド・VSC
General MIDI
XGフォーマット

もう一度検索