Gekko

Gekko - ニンテンドーゲームキューブの心臓部

Gekko（ゲッコー）は、2000年に任天堂のゲーム機、ニンテンドーゲームキューブのCPUとして、IBMによってカスタム設計された32ビットのPowerPCマイクロプロセッサです。

開発の背景

Gekkoの開発目的は、ゲームにおける複雑な処理、例えばゲームの記述、高度な人工知能、リアルな衝突検知、美しいライティング効果、そして滑らかなキャラクター変形などを容易に実現することでした。IBMと任天堂は1999年にこのプロジェクトを発表し、約400MHzで動作するCPUの開発に10億ドルの契約を結びました。

IBMは、グラフィックプロセッサである"Flipper"とは別に、任天堂の要望に応えるため、既存のPowerPC 750CXeプロセッサをベースに修正を加えることを選択しました。特に、バスアーキテクチャ、DMA（ダイレクトメモリアクセス）、データ圧縮、そしてSIMD（Single Instruction Multiple Data）命令の特殊なセットをサポートする浮動小数点ユニット（FPU）などがカスタム化されました。これにより、カスタムライティングや幾何学計算、大量の圧縮データをGPUへ直接転送するなどの作業を効率的に行うことが可能になりました。

IBMによるカスタム化は、当初の任天堂の仕様を上回る性能を実現しました。Gekkoプロセッサは、後にIBMが設計・製造し、Wiiに搭載されたBroadwayプロセッサの直接的な祖先と見なされています。

技術仕様

製造プロセス: IBM 6層銅配線 180 nm プロセス (ダイサイズ 43 mm²)
コア: PowerPC 750CXe コア (GameCube用にカスタマイズ)
動作周波数: 486MHz
整数ユニット: 32ビット
浮動小数点ユニット: 64ビット または SIMD 32 bit x 2 として使用可能
命令セット: PowerPC 750 + 約50の3Dグラフィック用SIMD命令
バス: 64 bitの拡張された60x bus (チップセット/GPU 162 MHz、1.3GB/s）
L1キャッシュ: 64 KB 8-way (命令 32 KB + データ 32KB)
L2キャッシュ: 256 KB 2-way
性能: 1125 DMIPS (dhrystone 2.1)
電圧: 1.8 V (ロジックおよびI/O)
消費電力: 4.9W
パッケージ: 27×27 mm PBGAパッケージ（256の接点）

関連情報

ニンテンドー ゲームキューブ|ニンテンドー_ゲームキューブ
PowerPC
Power Architecture

外部リンク

IBM, Nintendo Announce $1 Billion Technology Agreement
A PowerPC compatible processor supporting high-performance 3-D graphics

Gekkoは、ゲームキューブの性能を支えた重要な要素であり、その後のWiiのプロセッサ開発にも影響を与えた、興味深いプロセッサです。

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