HAPSモバイル

HAPSモバイルとは

HAPSモバイル株式会社は、かつて存在した高高度長時間滞空（HALE）無人航空機、高高度擬似衛星（HAPS）の開発企業でした。ソフトバンクと無人航空機メーカーのAeroVironmentの合弁会社として設立され、東京都港区に本社を置いていました。2023年10月1日にソフトバンクに吸収合併され、現在はその技術が親会社に引き継がれています。

HAPSモバイルの事業概要

AeroVironmentは、パスファインダープラス、ヘリオスプロトタイプ、グローバルオブザーバーなど、様々な無人航空機の開発で知られています。HAPSモバイルは、そのAeroVironmentの技術を利用し、太陽光発電を動力源とした高度約23,000m以上で飛行するHALE/HAPSの開発を進め、通信分野への応用を目指していました。

2019年4月には、気球を使ったインターネット接続サービスを提供するAlphabet傘下のLoonとの提携を発表し、相互に1億2500万ドルの出資を行うことで合意しました。この提携により、ホールセール事業の協業、地上ゲートウェイの統合、機体管理システムの最適化、そしてHAPSアライアンスの形成などが計画されました。

Sunglider（HAWK30）

HAPSモバイルが開発していた主要な機体が「HAWK30」で、後に「Sunglider」と改称されました。この機体は、高度20kmの成層圏に通信基地局として滞空し、直径200kmの範囲に通信サービスを提供することを目的としていました。

Sungliderは、全長約78mで10個のプロペラを備え、成層圏を時速約110kmで飛行します。ソーラーパネルと蓄電池を搭載し、太陽光発電による電力で、1回のフライトで約6ヶ月の連続稼働が可能とされていました。機体は軽量化とコストダウンのためカーボンパイプを使用し、1機あたりの製造費は「フェラーリ10台分くらい」と例えられています。

通信サービスには2.1GHz帯（Band1）を使用し、将来的には450MHz～2.6GHz帯までの標準化を目指していました。地上との通信には、6.5GHz、28GHz/31GHz、47GHz帯の拡張や、21GHz、26GHz、38GHz帯の追加が計画され、この標準化活動にはFacebookやAirbusも参加していました。

Sungliderの飛行は、太陽光発電の効率から赤道から緯度±30度の範囲に制限され、当初は赤道付近の国々でのサービス開始が2023年頃に予定されていました。また、OneWebの低軌道衛星をバックアップとして活用することも想定されていました。

日本国内では、Sungliderは航空機として扱われるため、航空法による型式証明や、通信帯域利用のための総務省との調整が必要でした。そのため、日本向けのサービス開始は2025年頃とされていました。しかし、日本上空では日照時間が短い為、年間を通じた運用には発電能力の向上が必要であり、次世代機「HAWK50」の開発が計画されていました。

2019年8月には、Facebookが南アフリカで行った成層圏通信プラットフォームの実証実験に参加し、Facebookの通信システムを搭載したHAPSを用いて、地上のゲートウェイと端末間の電波送受信を実証しました。

2020年2月には、Loonと共同でミリ波を使用する通信機器を開発し、最大700kmの距離で最大1Gbpsのデータ通信を可能にしました。

基本試験完了後、2020年7月23日に「Sunglider」に改称し、同年9月21日には初の成層圏飛行を成功させました。

HAPSモバイルの吸収合併後も、HAPSの開発はソフトバンクに引き継がれ、次世代機の開発が進められています。2024年10月2日には、アメリカ国防総省との共同実験で、次世代機による成層圏飛行に成功しています。

HAPSアライアンス

2020年2月には、HAPSの普及と関連技術開発を目的とした企業連合「HAPSアライアンス」が設立されました。このアライアンスには、HAPSMobile、AeroVironment、Loon、Airbus Defence and Spaceなど、12社が参加しています。

HAPSモバイルの沿革

HAPSモバイルの歴史は、AeroVironmentによる太陽光電力駆動の無人航空機の開発に遡ります。パスファインダーがNASAのプロジェクトに採用され、高度記録を達成した後に、ヘリオスプロトタイプへと発展しましたが、太平洋に墜落しました。その後、水素燃料電池駆動のグローバルオブザーバーが開発されましたが、こちらも墜落事故により開発は終了しています。

その後、AeroVironmentとソフトバンクがHAPS事業で提携し、2017年にHAPSモバイルが設立されました。2019年には、HAWK30を用いた事業展開や、Loonとの資本提携を発表しました。その後、連邦航空局からの飛行許可証取得や、Facebookとの実証飛行、NASAでのテスト飛行などを経て、2020年にはHAPSアライアンスを設立しました。2023年10月1日、ソフトバンクに吸収合併され、現在に至ります。

外部リンク

成層圏通信プラットフォーム「HAPS」
* AeroVironment

もう一度検索