HE-AAC

HE-AAC (High-Efficiency Advanced Audio Coding)とは

HE-AACは、オーディオ圧縮符号化の国際標準規格であるMPEG-4 AACの拡張仕様です。MPEG-4 Audio (ISO/IEC 14496-3) においてAACバージョン3として標準化されました。2003年にHE-AACが、2006年にはHE-AAC v2が制定されています。MPEG-4 AAC Plus SBR、aacPlus、AAC+などの名称でも知られています。

概要

HE-AACは、Coding Technologies社が開発したmp3PROで採用されているSpectral Band Replication（SBR）技術をAACに取り込むことで、主に低ビットレート（128kbps以下）での周波数特性を大幅に向上させています。これにより、より少ないデータ量で、より広い帯域の音を再生できるようになりました。

HE-AAC v2では、さらに低いビットレート（48kbps以下）での周波数特性を改善しています。aacPlus v2やeAAC+といった商標名で呼ばれることもあります。

HE-AACは、iTunes 9以降、Winamp、XMedia Recodeなどで無料でエンコードできます。また、「着うたフル」で使用されているコーデックとしても有名です。オープンソースのライブラリとしては、libaacplusがあります。

技術

HE-AAC v1

HE-AAC v1では、元のAAC音声データにSBRと呼ばれる高周波成分の情報を追加して記録します。具体的には、まず高周波部分を抜き出し、圧縮後のサンプリングレートで失われる周波数以上の情報を抽出します。次に、この高周波部分の情報を、エンコード部分との関連性を調べた上で、SBR情報として圧縮します。その後、低サンプリングレート（22050Hz）で通常のAAC圧縮を行います。これらの2つのデータを組み合わせて記録します。

デコード時には、まずAACをデコードし、その後SBR情報を使って高音域を予測・生成し、元の音と合成して再生します。AAC部分のサンプリングレートを44100Hzから22050Hzにダウンコンバートすることで、ビットレートとデータ容量を削減できます。

HE-AAC v2

HE-AAC v2では、v1の技術に加えてパラメトリックステレオ技術が導入されています。これにより、さらに低ビットレートでの音質改善が実現しました。

互換性

HE-AACデータは、ベースとなるAAC部分にSBR情報を付加する形で符号化されます。そのため、従来のAACのみを再生できるプレイヤーでも、音質は劣りますがAAC部分のみを再生できます。ただし、AACのみがデコードされる場合のサンプルレートは22050Hzとなります。

音質

高音域の成分が複雑な音の場合、歪みが目立ちにくいという特徴があります。しかし、高音域の成分が単調な音では歪みが聞こえやすくなります。これはSBR技術の特性によるもので、ビットレートを上げても改善しにくい場合があります。そのため、高音域が複雑なJ-POP、演歌、ハードロック、トランス音楽などには適していますが、高音域が単調なジャズやクラシック音楽などには不向きです。

また、AAC部分のサンプルレートは22050Hzであるため、軽快さ、滑らかさ、細やかさに欠ける場合があります。

種類

HE-AACにはいくつかの種類がありますが、1バイトを除いてほぼ同一であり、機能に大きな差はありません。ただし、下位互換であるAAC形式のコンテナには、iTunesで使用される拡張子M4Aと、Winampで使用される拡張子AAC（特にAACPlusと呼ばれる）の間に互換性がないため注意が必要です。これらの拡張子を書き換えても正常に読み込めないことがあります。

他にMP4フォーマット（拡張子MP4、3GP）が使用されることもあり、アプリケーションやデバイスによって対応状況が異なります。

MPEG-2 Audio AAC Bandwidth (MPEG-2 HE-AAC)

MPEG-2の構造と用途を用いたHE-AACで、SD-AudioやモバHO!で利用されています。AAC+SBRとも呼ばれます。

MPEG-4 Audio AAC Bandwidth (MPEG-4 HE-AAC)

MPEG-4の構造と用途を用いたHE-AACで、現在主流の規格です。

HE-AAC v2

HE-AAC v1にパラメトリックステレオを適用し、音質改善を施した規格です。48kbps以下の低ビットレートで周波数特性が改善されますが、高ビットレートでの音質改善はありません。

特許

v1はフィリップス、ドルビー、ノキアが特許を保有しており、利用には特許プールとの契約が必要です。v2はv1に加えて、フィリップスとドルビーが特許を保有しており、特許プールに加えてドルビーとの特許契約が必要となります。

利用例

Adobe Flash Player 9以降 - HE-AAC v2対応
HTML5
音楽配信
着うた ※ごく一部
着うたフル
au LISTEN MOBILE SERVICE（LISMO）
Apple Music ※「オーディオの品質」の設定で「高効率」を選択すると利用可能。
SD-Audio ※パソコンソフトSD-JukeboxやSDオーディオ機器ではAAC+SBRと呼ばれています。一部のNTTドコモのPシリーズ（パナソニック製）とNシリーズ（NEC製）、およびLシリーズ（LG製）のSDオーディオ対応携帯電話での再生に対応
テレビ放送
ワンセグ
モバHO!
インターネットラジオ
radiko
NHKネットラジオ らじる★らじる
デジタルオーディオプレーヤー - ウォークマン、iPod nano（第5世代以降）、iPod shuffle（第3世代のみ）など
スマートフォン - Android, iOS など

関連項目

AAC
mp3PRO
ドンシャリ

参照

外部リンク
* aacPlus

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