HEAO-3

HEAO-3 (高エネルギー天文観測所3号機)について

HEAO-3（High Energy Astronomy Observatory 3）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）のHEAO計画における最後の天文衛星です。1979年9月20日にアトラス・セントールロケットによって打ち上げられ、軌道傾斜角43.6°、近地点高度486.4kmのほぼ円形の低軌道に投入されました。観測モードは、太陽を指す探査機のZ軸を中心に、20分ごとに1回転する継続的な天体スキャンでした。打ち上げ時の総質量は2,660.0kgでした。

HEAO-3には、3つの主要な科学機器が搭載されていました。1つ目は極低温の高分解能ゲルマニウムガンマ線分光計で、残りの2つは宇宙線検出器でした。それぞれの機器の目的は以下の通りです。

ガンマ線分光計： 0.06から10MeVの範囲におけるX線源およびガンマ線源の強度、スペクトル、時間変動を分析し、背景の拡散X線およびガンマ線の等方性を測定します。さらに、X線とガンマ線の輝線を探索します。
宇宙線同位体組成計： 原子量7から56の範囲の宇宙線の中で最も豊富な同位体を決定し、原子番号4から50までの元素を測定します。
重核検出器： 原子番号120までの超重原子核を探査し、原子番号20以上の原子核の組成を測定します。

ガンマ線分光計実験 (HEAO-C1)

HEAO-3の「C-1」機器は、硬X線および低エネルギーガンマ線帯域での観測を目的とした掃天観測装置です。このガンマ線分光計は、恒星、銀河、星間物質中の陽電子の対消滅、星間物質と宇宙線の相互作用、宇宙線核合成における放射性生成物、低エネルギー宇宙線による核反応などで生成される511keVのガンマ線を検出するために設計されました。また、既知の硬X線源のスペクトルと時間変動についても詳細な調査が行われました。

実験機器には、平均6.6cmの厚さのヨウ化セシウムシンチレーションシールドで囲まれた、総容量約100cm3の低温p型高純度ゲルマニウムガンマ線検出器が含まれていました。これにより、背景放射を低減しています。実験では、0.045から10MeVの範囲のガンマ線のエネルギーを測定しました。ゲルマニウム検出器の初期エネルギー分解能は、1.33MeVで2.5keV以上であり、線感度はエネルギーに依存して1.E-4から1.E-5 /sq cm-sでした。主な実験パラメータは、(1)幾何学的因子:11.1 sq cm-sr、(2)実効面積:100keVで約75 cm2、(3)視野:45keVで半値幅約30°、(4)時間分解能:0.1ミリ秒以下（ゲルマニウム検出器）、10秒（ヨウ化セシウム検出器）でした。ガンマ線分光計は、冷却装置が停止した1980年6月1日まで運用されました。ゲルマニウム検出器のエネルギー分解能は、放射線による損傷のため、時間とともに低下しました。主なデータは、NASA HESARCおよびジェット推進研究所から入手できます。機器、軌道、データ、探査機の維持管理情報などは、1600bpiのテープに記録されており、より現代的なメディアに保存されたものもあります。この実験は、アラン・ヤコブソン氏の指揮の下、ジェット推進研究所によって提案、開発、運用されました。

宇宙線同位体組成実験 (HEAO-C2)

HEAO-3の「C-2」実験は、宇宙線中の原子番号4から26までの元素の相対同位体比と、原子番号50までの元素の存在量を測定することを目的としていました。チェレンコフ計数器とホドスコープは、地球の磁場とともに分光計を形成しました。これらの機器は、2から25GeV/c（cは光速）の運動量範囲の宇宙線の電荷と質量を約10%の精度で測定しました。この実験は、主要発明者のバーナード・ピーターズ教授とリヨイ・コッホ＝ミラモンド博士によって指揮されました。主なデータベースは、サクレー原子力研究センターとデンマーク宇宙研究所にあります。データは、1985年にエンゲルマンらによって提供されました。

重核実験 (HEAO-C3)

HEAO-3の「C-3」実験は、宇宙線源の特定、核合成、伝播モードの解明を目的として、エネルギー範囲0.3から10GeV、原子番号17から120の宇宙線原子核の電荷スペクトルを測定することを目的としていました。検出器は、上下両方の端にホドスコープ、3つの電離箱で構成され、両端はチェレンコフ放射体によって隔てられていました。幾何学的因子は4 sq cm-srでした。電離箱は、低エネルギーでは0.24電荷単位、高エネルギーまたは高原子番号では0.39電荷単位の分解能を持ちました。チェレンコフ計数器は、0.3から0.4電荷単位の分解能を持っていました。詳細については、ビンズらの研究を参照してください。この実験は、エドワード・C・ストーン博士、マーティン・H・イスラエル博士、セシル・J・ワディントン博士らの指揮の下、カリフォルニア工科大学の宇宙線研究所によって提案・運営されました。

プロジェクト

HEAO-3は、NASAのマーシャル宇宙飛行センターが運営したHEAO計画の最後のミッションであり、主要な製造業者はTRWでした。

関連項目

HEAO計画
HEAO-1
HEAO-2

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