HERO（ヒーローになる時、それは今）

HERO（ヒーローになる時、それは今）

甲斐バンドの楽曲『HERO（ヒーローになる時、それは今）』は、1978年12月20日にリリースされた11枚目のシングルです。話題となったこの曲は、当初のところ電通のプロデューサーから矢沢永吉や原田真二が候補として挙げられていましたが、最終的には甲斐バンドが起用されることとなりました。その理由として、彼らの独自性がメジャー過ぎないことが評価されたとされています。特に当時、甲斐バンドの存在を知っている関係者は少なかったため、この抜擢には驚きの声も上がりました。

このシングルは、服部時計店（現:セイコーホールディングス）のCMソングとして起用され、1979年の元日にはCMが一斉に放送され、そのインパクトから瞬く間に人気を得ました。実際この曲は、甲斐バンドにとって初のシングル盤チャート1位を達成し、その後の活動に大きな影響を与えました。なお、当楽曲はオリジナルアルバムには収録されておらず、ヒットを受けて『甲斐バンド・ストーリー』というベストアルバムに収められることになります。

興味深いことに、甲斐バンドはテレビ出演に対して消極的な姿勢を見せており、1979年に放送された『ザ・ベストテン』に出演する際も特別な条件を設けていました。甲斐よしひろはNHK-FMで『サウンド・ストリート』という音楽番組も担当しており、この公開録音スタジオから生中継される形で、司会者である黒柳徹子や久米宏とのトークを避けるという形での出演となりました。

B面には『からくり』が収録されていますが、こちらはアルバム『誘惑』からのシングルカットで、バンド初のレゲエスタイルの楽曲でもあります。このシングルはその後も影響力を持ち、海外ドラマ『HEROES』のCMでは甲斐よしひろ自身が歌った替え歌が使用されることもありました。このように『HERO』は、単なるヒットソングとしてだけでなく、日本のポップカルチャーにおいても重要な役割を果たしました。

また、この楽曲は他のアーティストによってもカバーされています。藤崎賢一、大黒摩季、ET-KING、ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズ、蓮城まこと、伊藤健太郎、乃木坂46など、さまざまなアーティストがそれぞれのスタイルで再解釈しています。

さらに、2010年にはアコースティックバージョン『HERO（ヒーローになる時、それは今） 2010 Acoustic Version』が配信されました。このバージョンは、甲斐バンドの映画『照和 My Little Town KAI BAND』の舞台挨拶で披露されたもので、ゲストにはブルースハープ奏者の中野茂樹が参加しています。配信はAmazonのMP3ダウンロード限定として行われ、時代を超えて多くのファンに愛され続けています。これにより、楽曲の魅力はますます広がり、甲斐バンドの音楽史においても重要な作品として位置付けられています。

以上のように、『HERO（ヒーローになる時、それは今）』は、甲斐バンドの魅力を凝縮した一曲であり、その影響は現在でも色褪せることはありません。

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