HOLD YOUR LAST CHANCE

HOLD YOUR LAST CHANCE：長渕剛の転換期を示すアルバム

1984年8月18日、長渕剛の7枚目のオリジナルアルバム『HOLD YOUR LAST CHANCE』がリリースされました。前作『HEAVY GAUGE』から約1年2ヶ月ぶりとなる本作は、作詞を長渕剛と秋元康、作曲とプロデュースを長渕剛が担当しています。

アルバム制作の背景

前作リリース後も精力的にライブ活動を続け、日本武道館公演も成功させた長渕剛。ファンクラブ「TSUYOSHI CLUB」結成記念イベントとして弾き語りツアーを開催するなど、多忙な日々を送っていました。

この時期、長渕剛は自身の歌声に強い不満を抱いていました。「自分の声が、嫌で嫌でしょうがなかった」と語っており、声質を変えるため、過酷な方法を試みていたといいます。その結果、声質、歌唱法共に変化を遂げ、それが本作の音楽性にも大きく反映されています。

また、このアルバムには、TBS系テレビドラマ『家族ゲームII』の主題歌として使用された先行シングル「孤独なハート」が収録されています。『家族ゲームII』は、前作『家族ゲーム』の高視聴率を受け制作されましたが、視聴率低迷により打ち切りとなり、急遽別のドラマが企画されることとなりました。

レコーディングと音楽性

5thアルバム『時代は僕らに雨を降らしてる』以来となる、ミキサーにグレッグ・ラダニーを迎え、ロサンゼルスでのレコーディングも一部行われました。

本作で聴くことができる長渕剛の歌声は、従来のものとは大きく異なっています。文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、「過去の歌唱法を真っ向から否定するボーカル」と評され、当時のリスナーには衝撃を与えたとされています。よりロック色の強いサウンドも特徴で、長渕剛の音楽性における大きな転換点となったアルバムと言えるでしょう。

リリースとアートワーク

『HOLD YOUR LAST CHANCE』は、レコード、カセットテープ、CDの3形態でリリースされました。その後、CDのみで再リリースされ、2006年には24ビット・デジタルリマスター、紙ジャケット仕様での再リリースも行われています。

ジャケット写真の血糊は、『家族ゲームII』の特殊メイクスタッフによるもの。文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、このジャケットについて、「自己の外見もキャンバスであると開眼したのではないか」と評されています。

アルバム収録曲と評価

アルバムには、「孤独なハート」の他に、「スローダウン」、「SHA-LA-LA」、「言わんこっちゃないさ」など、バラエティ豊かな楽曲が収録されています。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、ハードなギターサウンドと男っぽいメッセージ性を高く評価。文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、音楽ライターの藤井徹貫氏が「あの『順子』の、あの『乾杯』の声ではない。その衝撃が全編を貫いているアルバム」と絶賛しています。

チャート成績とツアー

オリコンチャートでは最高位3位、売上は約9万枚を記録しました。2006年の再発版でもチャート入りを果たしています。

本作を受けて「LIVE'84 - '85 HOLD YOUR LAST CHANCE」と題したコンサートツアーが開催され、35都市全41公演、日本武道館2日間連続公演も成功させました。

まとめ

『HOLD YOUR LAST CHANCE』は、長渕剛の音楽性における転換期を示す重要な作品です。変化した歌声、ロック色の強いサウンド、そしてドラマ主題歌の収録など、様々な要素が詰まった、聴き応えのあるアルバムと言えるでしょう。 彼の音楽史において、特筆すべき一枚です。 また、楽曲提供やカバー、ドラマへの楽曲使用など、様々な側面からこのアルバムが時代を反映していることがわかります。

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