HR 8799 e

HR 8799 e

HR 8799 eは、地球からおよそ128.5光年離れたペガスス座の方向に位置する恒星、HR 8799の周囲を公転する太陽系外惑星の一つです。この星系には、HR 8799 eを含め、現在までに4つの巨大ガス惑星が発見されており、いずれも直接撮像によってその存在が確認されています。

発見

HR 8799 eは、2008年に発見されたHR 8799 b、HR 8799 c、HR 8799 dの3惑星に続いて見つかった4番目の惑星です。これらの惑星は、A型主系列星である主星HR 8799の周囲を巡っています。HR 8799 eは、HR 8799の惑星の中でも比較的明るい惑星ですが、発見が他の3つよりも遅れたのは、主星に非常に近い軌道を公転しているため、主星の強い光に紛れてしまい観測が困難だったからです。

軌道の性質

HR 8799 eは、HR 8799星系に存在する惑星の中で、最も内側を公転しています。主星からの平均距離を示す軌道長半径は約21億7000万km（14.5天文単位、AU）です。この距離は、太陽系に当てはめると、土星と天王星の公転軌道の間に相当する位置になります。主星から離れた軌道であるため、HR 8799 eの公転周期はおよそ50年と推定されています。HR 8799星系の他の3つの惑星（b、c、d）は、互いに4:2:1の比率で軌道共鳴している可能性が指摘されています。HR 8799 eもこれらの惑星と軌道共鳴に近い値を持っていることから、4つの惑星全体で8:4:2:1という複雑な軌道共鳴構造を形成している可能性が考えられています。

物理的性質

HR 8799 eは、主星HR 8799からかなりの距離に位置していますが、HR 8799自体が太陽の約4.92倍も明るい恒星であること、そしてこの惑星系全体が誕生してからわずか2000万年から5000万年程度と比較的新しいため、惑星の表面温度は約730℃と非常に高温です。この高い温度により、HR 8799 eは強い赤外線を放射しており、これが直接撮像観測で捉えられた主な要因となっています。その光度は太陽のおよそ1万分の1、具体的な数値としては約7.7×10^21ワットに達しますが、主星HR 8799の光に比べると非常に暗く、見かけの等級では主星の10万分の1以下です。他のHR 8799の惑星から類推される色としては、見かけ上は暗い赤色をしていると考えられています。

HR 8799 eの質量は、木星の5倍から10倍と見積もられています。特に質量の推定値の上限は、褐色矮星と惑星を区別する境界とされる木星質量の13倍に比較的近い値です。もしHR 8799星系の実際の年齢が推定よりもやや古い場合、HR 8799 eの質量は木星の7倍から13倍となり、より重くなる可能性もあります。直径については、HR 8799の惑星の中で唯一直接的な測定値が得られていませんが、他の惑星と質量が似ていることから、直径もほぼ同程度であると推測されています。

HR 8799 eの大気の詳しい組成はまだ分かっていません。しかし、HR 8799星系全体を包む広大な塵の円盤には、一酸化炭素やメタン、そしてアンモニアやアセチレンのいずれか、あるいは両方が含まれていることが観測によって示唆されており、これらの物質が大気の組成に関与している可能性があります。この塵の円盤の組成調査は、主星から比較的離れて位置するHR 8799 bの分光観測によって行われました。これは、HR 8799 bが主星から約1.7秒角という十分な角距離があるため、主星の光の影響を比較的受けずに観測が可能だったからです。

もう一度検索