HVD

ホログラフィック・バーサタイル・ディスク（HVD）とは

HVD（Holographic Versatile Disc）は、DVDやBlu-ray Discといった従来の光ディスク規格の次世代に位置づけられる技術です。この技術は、従来の「面」での記録ではなく、「立体」的にデータを記録することで、記録容量を飛躍的に増大させることを目指しています。HVDは、VRD（Volume Replicated Disc）とも呼ばれることがあります。

HVDの基本原理

従来の光ディスクの記録密度は、使用する半導体レーザーの波長に依存しています。波長が短くなるほど記録密度は向上しますが、Blu-ray Discで使用されている青紫色のレーザーが、可視光線の中で最も短い波長です。更なる記録密度の向上には、紫外線領域の半導体レーザーが必要となりますが、紫外線は光ディスクの素材であるポリカーボネート樹脂などを劣化させてしまうため、使用が困難です。

そこで登場したのが、ホログラフィック記録技術です。この技術では、光ディスクの記録層を立体的に使用することで、従来の方式では実現できなかった大容量化を可能にします。ただし、従来のホログラフィック記憶媒体は、光学系装置が複雑になりがちで、実用化が難しいとされていました。しかし、日本のオプトウェアが開発した「コリニア方式」によって、これらの問題点が克服され、実用化への道が開かれました。

コリニア方式

コリニア方式とは、赤と青緑の2色のレーザーを1本のビームにまとめて照射する技術です。青緑色のレーザーでホログラフィック層にエンコードされたデータを読み取り、赤色のレーザーで制御情報を読み取ります。この方式により、従来の技術で必須だった除震装置が不要となり、散乱ノイズの影響も軽減されました。HVDの記録容量は、片面1層のBlu-ray Discの約20倍となる1テラバイト（1024GB）で、転送速度も28倍の1Gbpsとされています。

業界の動向

日本

2005年、オプトウェアはHVDの標準化を目指しHVDアライアンス（現HSD FORUM）を設立しましたが、同社の活動停止により、製品化は実現しませんでした。その後、経営主体が変わり、新オプトウエア株式会社として事業を継続しましたが、HVDは実用化には至っていません。しかし、アライアンス設立時からのメンバーであるパルステック工業は、HVD用の評価装置を開発し、製品化しています。

日本のその他のホログラムディスク開発

HVDアライアンスには加盟していないものの、TDKやパイオニアも独自にホログラムディスクの開発を進めており、それぞれ200GB、400GBの容量を記録する技術を開発しています。また、東京理科大学は、2TBの容量を持つホログラムディスクの開発に成功しており、2020年の東京オリンピックの高精細映像のアーカイブを目標としていました。

アメリカ合衆国

アメリカのInPhase社は、業務用ホログラフィックストレージドライブ「Tapestry 300r」を2008年に発売予定でしたが、商品化には至らず倒産しました。その後、資産はAkonia Holographics社に買収されましたが、同社もApple社に買収されています。また、GEも500GBのマイクロホログラフィックディスクの開発に成功しています。

その他

イスラエルのMempile社は、赤色レーザーを用いた1TBの「TeraDisc」を開発していました。

規格団体

HVDの規格団体としては、HVDアライアンスが設立されましたが、その後HSD FORUMへと名称を変更しています。このフォーラムには、多くの企業が参加しており、HVD技術の標準化と普及を目指して活動しています。

HSD FORUMのメンバー

新オプトウエア（）
富士フイルム（）
東亞合成（）
日本ペイント（）
パルステック工業（）
三菱化学メディア
エリコン（OC Oerlikon Balzers AG）
芝浦メカトロニクス
コニカミノルタオプト
CMCマグネティクス
LITE-ON IT
MPO International
Software Architects

（*） - HVDアライアンス設立時からの企業

まとめ

HVDは、大容量化を実現する光ディスク技術として、その可能性が期待されています。実用化には至っていないものの、様々な企業や研究機関が開発を進めており、今後の動向が注目されます。この技術が実現すれば、大量のデータを効率的に保存・利用することが可能になり、デジタル社会の進展に大きく貢献するでしょう。

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