He 176 (航空機)

He 176 - 世界初の有人液体燃料ロケット飛行機

He 176（Heinkel He 176）は、1939年6月20日にエーリッヒ・ヴァルシッツが操縦し、初めての有人液体燃料ロケット飛行機として成功裡に飛行しました。この試みは、ロケットエンジンの歴史における重要なマイルストーンとなります。1940年代の初飛行に向けた探索の一部であり、高速航空機の動力源としての可能性を追求するものでした。

ロケットエンジンの進化

1920年代から、本格的なロケットエンジンの開発が進められましたが、当初は固体燃料が主体でした。1937年、ヴァルター社のヘルムート・ヴァルターが液体燃料式ロケットエンジンを成功裏に完成させ、これがHe 176の開発へとつながります。この新技術は、高速飛行における優位性を持ち、以前の固体燃料エンジンの欠点を克服するものでした。

He 176の設計

He 176の機体は、空気抵抗を減少させるために流線型デザインが採用され、コックピットは胴体と一体化されています。機体の全長は6.2メートル、全幅5.0メートル、全高1.5メートルで、最高速度は750 km/hが予想されていました。さらに、航続距離は約95 km、実用上昇限度は9,000 mに達する見込みでした。全備重量は1,620 kgで、1名の乗員を乗せる設計がされていました。

試験飛行と結果

He 176の試験飛行は、ナチス・ドイツ高官たちの前で行われましたが、期待された性能には達しませんでした。このため、開発は中止されることとなり、He 176は試作機としての運命を歩むこととなりました。しかし、このプロジェクトはロケットエンジン技術のさらなる発展へとつながります。

後の発展

He 176の開発後、ロケットエンジン技術は継続的に進化し、メッサーシュミット社によって開発されたMe 163が1941年に世界初の実用ロケット戦闘機として初飛行しました。このように、He 176はその後のロケット技術の礎となったのです。

初期の実験と実績

1920年代半ば、ドイツではスタントマンたちが固体燃料を用いた様々な乗り物の実験を開始しました。1929年には、アレクサンダー・リピッシュがエンテを開発、さらにフリッツ・フォン・オペルもRAK.1を発表しました。しかし、固体燃料ロケットの特性上、点火後の出力調整が難しく、航空機には向かないものでした。

1931年には液体燃料ロケットの研究が始まり、1934年にはヴェルナー・フォン・ブラウンが初の液体燃料ロケットを試験しました。彼のチームは1936年には液体燃料を搭載した飛行機の設計を進め、エルンスト・ハインケルの協力によりHe 72およびHe 112を使った実験が行われました。

結論

He 176の成功は、液体燃料ロケットの可能性を示し、航空力学の発展に寄与しました。有人液体燃料ロケットという新しい領域への突破口となり、更なる技術革新を生む契機となりました。今後のロケット技術の進展に向けた布石となったことは、航空史における重要な出来事として記憶されるべきです。

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