He 274 (航空機)

ハインケルHe 274の概要

ハインケルHe 274は、第二次世界大戦中にドイツで設計された4基のエンジンを搭載した爆撃機です。この機体は、高高度での飛行能力を備えており、もともとはHe 177の改良型として開発されましたが、独特の設計変更により新しい可能性を秘めた機体に仕上がりました。

設計の進化と特徴

ドイツ空軍の通常の慣例では、改良型は元の機体番号に100を加えた番号が付与されます。例えば、Ju88はJu188へ、Do217はDo317へと番号が変更されました。しかし、He 277という番号は1943年9月に設計が始まっていたため、He 274には別の番号が与えられました。1943年から1944年の冬にかけて、ウィーン近郊のハインケルの工場でHe 177Aを元にした新しい設計の試作機が4機製造されました。

He 274とHe 277の主な相違点は、He 177が双子エンジンを採用しているのに対し、He 274は排気タービン過給機TK 11Bを持つ4基のエンジンを搭載している点です。そのため、機体の胴体は拡張され、新型の翼と2つの尾翼が加えられ、主脚に2つの車輪が設けられました。この構造は、He 177が持っていた独特の4本足の主脚とは大きく異なります。

He 274のデザインは、1941年11月10日に高高度型のHe 177Hとして初めて設計されました。この機体には、与圧キャビンが搭載されており、4名の乗員が高高度でも快適に飛行することができます。この与圧キャビンは、2,500メートル程度の高度でも十分な気圧を維持することができました。

また、重武装が施されており、前方には13mmのMG 131機関銃が、背部と腹部には遠隔操作の連装銃塔が装備されていました。背部の銃塔はキャビンの上方に設置されたガラス製のドームから操作され、腹部はゴンドラの後部から撃つことができました。

フランスへの委託

1941年、ハインケル社は多くの緊急プロジェクトに取り組んでいたため、He 274の設計はフランスの企業、SAUFに委託されました。He 274の試作機2機（V1とV2）はフランスで製造される予定でしたが、1943年までに着工されることはありませんでした。1944年7月にはHe 274 V1が飛行試験の準備が整いましたが、連合軍が迫っていたため、ハインケルの担当者は避難を余儀なくされました。最終的には、機体の細部に様々な問題があり、未完成の状態で破壊されてしまいました。

戦後の運用

比較的被害の少なかったHe 274 V1は、連合軍によって修理され、その後「AAS 01A」という名称でフランス空軍により運用されました。この機体は高高度飛行機として数年間使用され、やがてフランスの初期のジェットエンジンやロケットエンジンの試験者として使われました。He 274 V2は「TK 11」クラスの排気タービン過給機を装備し「AAS 01B」として完成し、1947年12月27日に初飛行を果たしました。

両機体は1953年後半まで使用され、その後解体されました。

スペック

• - 乗員: 4名
• - 全長: 23.80 m
• - 全幅: 44.19 m
• - 全高: 5.50 m
• - 翼面積: 170.00 m²
• - 空重量: 21,300 kg
• - 最大離陸重量: 38,000 kg
• - エンジン: ダイムラー・ベンツ DB 603A
• - 最大速度: 580 km/h (11,000 mにて)
• - 航続距離: 3,440 km
• - 上限高度: 14,300 m
• - 武装: 13 mm MG 131機関銃 × 5
• - 最大搭載爆弾重量: 4,000 kg

ハインケルHe 274は、その特異な設計と高高度での運用能力により、当時の航空技術において重要な位置を占めていました。

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