He 280 (航空機)

ハインケルHe280について

ハインケル社が開発したHe280は、第二次世界大戦時の重要な航空機の一つであり、世界初の実用ジェット戦闘機を目指して設計されました。ジェット機の歴史を学ぶ上で、He280の開発経緯や特徴は非常に興味深いものです。

開発の背景

ハインケル社は、世界初のジェット機であるHe178の試験飛行に成功した後、さらなる技術革新を目指してHe280の開発に取り組みました。この機体は、同社の初期の成功を受けて、ジェット推進による戦闘機を市場に投入することを目指していました。

He280は、2基の遠心式ジェットエンジン「HeS 8」を主翼下に配置する独自の設計を採用しています。このレイアウトは、整備性を向上させる利点がある一方で、機体性能の向上には限界がありました。

初飛行と遭遇した課題

1941年4月2日、He280V1が初のジェット推進による飛行に成功します。この成功は、ライバルのMe262がピストンエンジンでの飛行を行う二週間前の出来事でした。しかし、この新しい航空機への期待とは裏腹に、ドイツ航空省の反応は冷淡でした。

当時のドイツは、英国との交渉を断ち切り、ソ連に向けての攻撃を強化していました。この状況下で、航空省は新しい技術に対して慎重であり、実際に役立つか不明なジェット戦闘機の生産に対する注力を控えていました。また、地上侵攻支援が優先されていたため、空中戦用の防空戦闘機があまり必要されていなかったことも影響しました。

開発の続行と航空省とのやり取り

それにもかかわらず、ハインケル社はHe280の開発をなだれ込む勢いで続けました。1942年春には、BMW003エンジンのトラブルを抱えていたMe262を尻目に、さらに6機の試作機の製造に成功しました。

航空省は前輪式の降着装置に対して不安を抱えていたため、He280の導入に乗り出すことに二の足を踏んでいました。しかし、1942年に行われたFw190Aとの模擬空戦では、He280の圧倒的なスピードが勝利を収めたことで、航空省の見方が変わり、先行量産型のHe280A-0が受注されることになりました。

その後、ユモ004エンジンの導入によってHe280V2の最高速度が790km/hに達し、性能は向上しましたが、最終的にHe280はMe262に機体性能で劣ることが判明し、量産契約は取り消されてしまいました。

デザインと技術的特性

He280の外観は、レシプロ機とそれほど変わらぬ平凡なデザインでしたが、中身には特筆すべき点がありました。圧搾空気を用いた史上初の射出座席や、後のジェット機において標準となる前輪式降着装置を搭載するなど、革新的な技術がいくつも取り入れられていました。

スペック

• - 乗員: 1名
• - 全長: 10.40 m
• - 全幅: 12.20 m
• - 全高: 3.06 m
• - 翼面積: 21.50 m²
• - 自重: 3,055 kg
• - 最大重量: 4,300 kg
• - 動力:

- ユンカース Jumo 004B-1 ×2 (He280 V2, V6)
- ハインケル-ヒルス HeS109-001 ×2 (He280 V1, V3, V5)
- BMW 003 ×2 (He280 V4)

• - 推進力: 750 kg × 2 (ユモ004)
• - 最高速度: 790 km/h
• - 航続距離: 620 km
• - 上昇限度: 11,400 m
• - 武装: 20mm MG151/20 機関砲×3

結論

ハインケルHe280は、第二次世界大戦の航空機技術の進化を象徴する機体であり、その開発過程には多くの挑戦と革新がありました。時代を先取りする技術を備えながらも、その運命は複雑であったと言えます。

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