High-Speed Uplink Packet Access

HSUPA (High-Speed Uplink Packet Access) とは

HSUPAは、第3.5世代移動通信システム（3.5G）における高速データ通信技術の一つで、HSPAファミリーに属します。上り回線（アップリンク）のデータ転送速度を最大5.76Mbpsまで向上させることを目的としています。この技術は、ノキアによって名付けられましたが、3GPP（3rd Generation Partnership Project）による正式名称は「Enhanced Uplink (EUL)」です。

技術仕様

HSUPAの仕様は、3GPPの規格である「Universal Mobile Telecommunications System Release 6」に含まれています。Enhanced Uplinkの主な目的は、上り回線専用の転送チャネルの性能向上であり、具体的には容量とスループットの増大、そして遅延の低減です。

HSUPAは、上りリンクに「enhanced dedicated channel (E-DCH)」を使用します。このチャンネルでは、HSDPA (High-Speed Downlink Packet Access) でも用いられている適応変調が採用されており、伝送時間間隔 (TTI) を短縮することで、この適応変調をより高速化しています。

さらに、ハイブリッドARQ（自動再送要求）に incremental redundancy を加えることで、再送の効率を向上させています。HSDPAと同様に「パケット・スケジューラ」を使用しますが、HSUPAは「要求-承認」型の運用を行います。ユーザー端末がデータ送信の許可を要求し、スケジューラが許可する端末数を決定します。送信要求には、バッファの状態や端末のキューの状態、パワーマージンに関するデータが含まれます。ただし、HSDPAとは異なり、上り転送は互いに直交ではありません。

スケジュールモードと非スケジュールモード

HSUPAには、「スケジュールモード」と「非スケジュールモード」の2つの転送モードがあります。スケジュールモードは、基地局が転送を制御する方式で、非スケジュールモードは、ユーザー端末が自発的に転送を開始する方式です。

非スケジュールモードは、例えば、短いTTIと基地局ベースのスケジューラでは提供できない非常に短い遅延時間と一定の帯域幅を必要とするVoIPサービスなどで使用されます。MAC-dフロー（QoSフロー）は、それぞれスケジュールモードまたは非スケジュールモードのいずれかを使用するように設定できます。

ユーザー端末は、スケジュールされたフローと非スケジュールされたフローの転送レートをそれぞれ独立に調整します。個々の非スケジュールフローの最大転送レートは、呼の設定時に決定され、一般的には頻繁には変更されません。一方、スケジュールされたフローの送信電力は、基地局が絶対グラントメッセージと相対グラントメッセージを通じて動的に制御します。

物理チャネル

HSUPAは、第1層に以下の新しい物理チャネルを導入しています。

E-AGCH (Absolute Grant Channel)
E-RGCH (Relative Grant Channel)
F-DPCH (Fractional-DPCH)
E-HICH (E-DCH Hybrid ARQ Indicator Channel)
E-DPCCH (E-DCH Dedicated Physical Control Channel)
E-DPDCH (E-DCH Dedicated Physical Data Channel)

E-DPDCHはE-DCHトランスポートチャネルを運び、E-DPCCHはE-DCHに対応する制御情報を運びます。

HSUPAのカテゴリ

HSUPAにはいくつかのカテゴリが存在し、それぞれが異なる上り転送速度をサポートしています。詳細なカテゴリごとの転送速度については、以下の表を参照してください。

ロードマップと将来展望

3GPPは、HSUPAの後継となる更なる転送速度向上を目指して研究開発を進めています。LTE (Long Term Evolution) は、下り最大326.4 Mbit/s、上り最大86.4 Mbit/sの速度を提供し、LTE-Advancedでは、下りレートを1Gbit/s以上にすることが計画されています。

参考文献

Harri Holma and Antti Toskala (2006). HSDPA/HSUPA for UMTS: High Speed Radio Access for Mobile Communications. ISBN 0470018844

関連項目

Long Term Evolution
* デバイス帯域幅の一覧

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