I-16 (航空機)

I-16戦闘機について

I-16（ロシア語: Поликарпов И-16）は、ソビエト連邦のポリカルポフ設計局が手掛けた、単葉の戦闘機です。この機体は、戦間期から第二次世界大戦の初期にかけて、赤色空軍の主力戦闘機として活躍しました。I-16は世界で初めて実用的な引込式主脚を備えた戦闘機としても知られ、その革新的な設計が注目されました。

概要

I-16は木製で、短く太い胴体を特徴としています。アメリカの高速レース機「ジービー・レーサー」と似たような外観を持っており、その寸詰まりなデザインは、高速性能を追求した設計者ニコライ・ポリカールポフのアイデアに由来しています。初めての試作機であるTsKB-12は1933年に完成し、同年12月に初飛行を果たしました。

この機体の大きな特長は、パイロットの力でワイヤー駆動によって作動する引込式主脚です。配備当初は世界最速の戦闘機であり、九五式戦闘機やHe 51といった複葉機を性能的に圧倒しました。ただし、ノモンハン事件での九七式戦闘機の最高速はI-16と同等か、それを上回ることがあったため、優れた性能を発揮できるのは急降下速度においてでした。

I-16は、スペイン内戦、ノモンハン事件、独ソ戦の初期、冬戦争などさまざまな戦争に使用されました。しかし、航空機の進化が急速だったため、どの戦闘でも新たな高性能機に圧倒される場面が多くありました。それでも、ソ連ではI-16を操縦する撃墜王が数多く誕生しました。しかし、1941年にドイツの侵攻が始まると、この機体は逐次旧式化し、より高性能なYak-1やLaGG-3、MiG-3などに取って代わられていきました。

I-16の設計は、1932年に着手され、当時の多くの航空機が複葉機であった中で、純片持式の低翼単葉機、モノコック構造の胴体、引込主脚、スライド式の風防、推力型の単排気管など、数多くの新機軸が取り入れられました。また、機首のエンジンカウリングにはシャッターを設置し、厳寒期にエンジンがオーバークールするのを防ぐ工夫もなされました。

I-16の量産は1941年までに8,644機（別の説では9,450機）が行われました。第二次世界大戦が勃発する時点では既に旧式化していましたが、新タイプのI-16が再生産され、1943年ころまで対地攻撃任務などで運用され続けました。その独特の形状から、ソ連兵からは「イシャク」（ロバ）、スペイン内戦の兵士からは「モスカ」（ハエ）や「ラタ」（はつかねずみ）などの愛称で親しまれました。

主要な派生型

I-16には多くの派生型が存在し、それぞれに異なる機能や性能が求められました。例えば、最初の試作機TsKB-12は336 kWのM-22エンジンを搭載し、機内にShKAS機関銃2丁を装備していました。また、I-16 Type 24は、670 kWのシュベツォフM-63エンジンを搭載し、より高い性能を発揮しました。

現存する機体

現在、I-16の幾つかの機体がニュージーランドで発見され、保存・復元されるプロジェクトが進行中です。このプロジェクトでは、ロシアで発見された6機のI-16と3機のI-153が飛行可能な状態に復元される計画で、1995年に初飛行を果たしました。

I-16はその独自の設計と歴史的な役割から、航空機デザインの進化において重要な位置を占めています。

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