ICD-10 第5章:精神と行動の障害

ICD-10 第5章: 精神および行動障害

概要

『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版（ICD-10）の第5章は、精神および行動障害を包括的に分類し、識別するための重要な基盤を提供しています。この章では、臨床現場での診断の支援を目的とした「臨床記述と診断ガイドライン」（ブルーブック）が初めて導入されており、さらに研究の場での利用を目的とした「研究用診断基準」（DCR、グリーンブック）が補完的に記載されています。これらは、実際の診断と治療への適用を考慮した、精密な情報を提供します。

診断基準の重要性

ICD-10における精神的な診断のための基準は、症状や行動が個人の機能に与える影響についての詳細な情報を含んでいます。そのため、診断を行う医療従事者は、患者の症状を効果的に評価するためには「臨床記述と診断ガイドライン」の理解が不可欠です。一方で、DCRは実験的な研究や診断の統一に役立ちますが、単体での使用は限界があります。これによって、正確な診断と適切な治療法の選定が可能であり、患者に対する支援がより効果的に行なえるようになります。

用語の定義

この章では1994年にWHOが発表した『精神医学と精神保健の用語集』第2版を参照し、精神的な障害に関連する様々な用語の定義を用意しています。また、『アルコールと薬物の用語集』も有用で、診断コードとともに疾患の理解を助けます。F1x.70のようなコードは、特定の症状に関連しており、迅速な診断に寄与します。

障害の定義

ICD-10では「障害」という用語を採用しておりますが、疾患という用語は発生する混乱を避けるために用いられません。この章では、障害は臨床的に意味のある症状や行動、個人の機能不全を伴う状態を指します。また、社会的な逸脱や葛藤が存在しても、苦痛や機能不全がなければ精神的な障害と見なされません。

精神および行動の障害の分類

F00-F99: 精神および行動の障害

このコード範囲では、さまざまな精神障害が細かく分類されています。たとえば、F00からF09では、器質性精神障害の症状が記載されており、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などが含まれます。その後の番号では、統合失調症、気分障害、神経症性障害などの詳細な分類がなされています。これにより、医療提供者は特定の症状に基づいて迅速に診断し、適切に治療を行うことが容易になります。

障害の範囲

精神および行動障害は、広範囲にわたるため、詳細な識別が可能であり、特に患者のニーズに応じた多様な治療法を提供することが求められます。たとえば、F40-F48では神経症性障害の詳細、F50-F59では身体的要因に関連した行動症候群が記載されており、F60-F69には成人のパーソナリティおよび行動の障害に関する情報がまとめられています。

このように、ICD-10第5章は、精神的健康領域における包括的なガイドラインとして非常に重要な役割を果たしており、正確な診断と効果的な治療につながる基盤を提供しています。

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