疾病及び関連保健問題の国際統計分類

国際疾病分類（ICD）について

国際疾病分類（International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems、略称：ICD）は、世界保健機関（WHO）が策定した、疾病や死因の国際的な統計分類システムです。ICDは、医療機関での診療記録の管理や、国際的な疾病の比較を目的として広く利用されています。現行の最新版はICD-11であり、2019年5月に第72回世界保健総会で正式に採択されました。この新しい分類が日本での適用に向けた作業が進行中であり、厚生労働省の社会保障審議会では和訳や実施方法が検討されています。

ICDの歴史

ICDの起源は1853年に遡ります。その年、ブリュッセルでの第一回国際統計会議で、ファーとデスピンが死因分類の作成を任されました。1860年にはフローレンス・ナイチンゲールがロンドンで傷病統計調査の必要性を訴え、1893年にはジャック・ベルティヨンが「死因に関するベルティヨン分類」を発表しました。これ以降、ICDは進化を続け、1900年に第1回国際死因分類が策定されました。

9版までの改訂は約10年ごとに行われ、各版は基本的にアルファベットと数字で構成されています。第7版からは死因に加え、様々な疾病が分類に取り入れられ、医療現場での有用性が向上しました。特にICD-10は、分類として非常に広く普及し、2016年の改訂版まで更新が続けられています。

ICD-10の使用

日本国内でのICD-10対応は、医療情報システム開発センター（MEDIS-DC）が開発した「標準病名マスター」により実現されています。このシステムは、ICD-10の約7万コードを網羅しており、医療機関での統一された病名利用を支えています。精神医学においても、ICD-10は代表的な診断基準としてアメリカ精神医学会が定めたDSM-IVと並行して使われることが多いです。また、新生物に関する分類は「ICD-O」（国際疾病分類腫瘍学）が補完的に使用されています。

統計法に基づく利用

厚生労働省は、患者調査にICD-10を採用していますが、実際には中分類のみが一部利用され、全体のカバー率には限界があります。診療報酬明細書内の疾病名は、傷病名マスターに基づいており、ICD-10との整合性が取られていますが、2018年6月時点で25,695項目しか対応していません。加えて、厚生労働省にはICD-10と連動しない別の120項目の疾病コードが存在します。

さらに、2014年には総務省統計委員会が別の「疾病、傷害及び死因の統計分類」を新たな統計基準として採用しました。これはICD-10に比べて中分類のみの設定であり、死因分類表が133項目と少なく、ICD-10の900項目には遠く及ばない内容です。

結論

国際疾病分類は、医療に関する多様なデータを統合し、国際的な比較を可能にする不可欠な指標です。ICD-11の導入に向けた取り組みは、今後の公衆衛生や医療制度における基幹要素となることでしょう。今後もその発展が期待されます。

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