IDT

Integrated Device Technology (IDT) について

Integrated Device Technology, Inc.（IDT）は、かつてアメリカに存在した半導体企業です。本社はカリフォルニア州サンノゼにあり、通信、コンピュータ、一般機器などの幅広い分野で使用される、低消費電力で高性能なアナログ-デジタル混在半導体部品の設計と製造を手掛けていました。

事業内容

IDTは主にOEM製品を扱い、その事業内容は以下の3つの部門に分かれていました。

通信部門：通信用クロック、無線基地局向けソリューション、高周波製品、デジタルロジック製品、FIFOメモリ、統合通信プロセッサ、SRAM製品、通信用半導体素子などを扱っていました。主な顧客は企業、データセンター、無線業界でした。
コンピュータ部門：タイミング製品、PCI Express関連ソリューション、高性能サーバ用メモリインタフェース、マルチポート製品、信号完全性製品、PC向けオーディオ/ビデオ製品などを扱っていました。主な対象はデスクトップPC、ノートPC、サブノートPC、ストレージ、サーバでした。
コンシューマ部門：タイミング製品、マルチポート・メモリ、オーディオデバイス、パワーマネジメントデバイスなどを扱い、デジタルTV、スマートフォン、ゲーム機などを対象としていました。

IDTは特に、複数の回路間でタイミングを正確に合わせるために不可欠なクロック関連技術において、高い専門性を持っていました。

歴史

IDTは1980年に通信・コンピュータ向けのCMOS製品メーカーとして創業しました。その歴史の中で、数々の業界初の製品を開発しています。

1981年：低消費電力で高性能なCMOSベースの6116 SRAMをリリース
1982年：世界初のCMOS FIFOをリリース
その後：世界初のデュアルポート・メモリ、初期の組み込み用RISCプロセッサ、タイミング市場における様々な世界初の製品、世界初のフロー制御デバイスなどを開発
1993年：デスクトップPC用クロックデバイス市場に参入し、その後ノートPCにも展開
過去には：QEDの設計したMIPSマイクロプロセッサや、子会社Centaur Technologyが設計したx86互換プロセッサ（IDT WinChip）を製造。
1999年：Centaur Technologyをx86互換プロセッサの設計とともにVIAに売却
2000年代初め：統合マイクロプロセッサRC32334をリリースし、通信アプリケーション向けの統合プロセッサのファミリを展開。
2003年：PCクロック市場に再参入し、PCクロック製品ファミリを新世代のパーソナルコンピュータ向けに一新
2004年：ZettaComとInternet Machines Corporationを買収し、シリアル・スイッチ市場に参入。
2000年代中ごろ：インテルCentrino採用のノートPC向けワンチップ・クロックデバイスや、PCI Express用ジッター減衰器などを開発
2009年：マイクロン・テクノロジと提携し、PCI Express用ソリッドステートドライブの開発に着手

その他にも、アナログスイッチ、USBスイッチ、メモリインタフェース製品、温度センサ、タッチパネル関連製品など、多岐にわたる製品を取り扱っていました。

合併と買収

IDTは、事業拡大のために積極的に買収戦略を展開しました。主な買収と売却は以下の通りです。

2001年：中国の半導体メーカーNewave Inc.を買収
2004年：シリアル・スイッチ専門のZettaComを買収
2005年：Integrated Circuit Systems (ICS) およびフリースケール・セミコンダクタのタイミング・ソリューション部門を買収
2006年：SigmaTelのPCオーディオ部門を買収
2008年：Silicon Optixのビデオ処理技術と関連資産を取得
2009年：ネットワーク・サーチ・エンジン事業をNetLogic Microsystemsへ売却。Leadis Technologyのタッチセンサ技術資産とTundra Semiconductorを買収
2010年：シリコン発振器技術のMobius Microsystems Inc.とIKORを買収
2011年：Hollywood Quality Video (HQV)とFrame Rate Conversion (FRC) ビデオ処理製品ラインをクアルコムに移転し、同時にNetLogic Microsystemsを買収

ルネサスエレクトロニクスによる買収

2018年9月、IDTはルネサスエレクトロニクスによる買収が発表され、2020年をもってルネサスエレクトロニクスに吸収合併され、「ルネサスエレクトロニクス・アメリカ」となりました。

IDTは、その歴史の中で、クロック技術をはじめとする様々な分野で革新的な製品を開発し、半導体業界の発展に大きく貢献しました。ルネサスエレクトロニクスの一員となった現在も、その技術と遺産は受け継がれています。

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