IEEE 1284

IEEE 1284：パソコンと周辺機器をつなぐパラレル通信規格

IEEE 1284は、コンピューターと周辺機器（主にプリンター）間の双方向パラレル通信を規定するIEEE標準規格です。かつてはプリンター接続のデファクトスタンダードとして広く利用されていましたが、USBの普及に伴い、現在では旧式のプリンターなどで見られる程度となっています。

歴史と背景

IEEE 1284の起源は、1970年代にセントロニクス社が開発したプリンター用パラレルインタフェースにあります。このインタフェースは、すぐに業界標準として広く採用されました。ただし、Macintoshの一部機種のように、RS-422を採用した例外もありました。

しかし、1992年にHPが発表した「Bitronics」という拡張インタフェースによって、セントロニクス規格は標準としての地位を揺るがされることになります。これを受けて、1991年にNetwork Printing Allianceが新しい標準の開発に着手し、1994年3月にIEEE 1284として正式に規格がリリースされました。

IEEE 1284の特長

IEEE 1284の大きな特長は、高速な双方向データ通信を実現できる点です。理論上は最大4Mbpsのスループットが可能です。ただし、実際の通信速度はハードウェアの性能に依存し、約2Mbps程度になります。

この双方向通信により、プリンターはホストコンピューターにステータス情報を返送できるようになり、より高度な印刷制御が可能となりました。また、周辺機器は大量のデータをコンピューターに送信できるため、スキャナーやテープドライブ、ハードディスクなどのデバイスを低コストで提供できるようになりました。さらに、パラレルインタフェースを介して、コンピューターネットワークアダプターや他のデバイスを直接接続することも可能になり、高価なSCSIカードが不要になりました。

通信モード

IEEE 1284は、以下の5つの通信モードを定義しています。

1. コンパチブルモード (SPP): セントロニクス互換モードとも呼ばれ、単方向通信です。元のセントロニクス規格との互換性を重視したシンプルなモードです。
2. ニブルモード: 単方向通信で、データ通信にステータスラインを使用し、4ビット単位でデータを送信します。HPが開発したBi-tronicsモードの一種で、拡張プリンターステータスの取得によく使用されます。
3. バイトモード: データラインを使って8ビット単位でデータを送信するモードです。
4. Enhanced Parallel Port (EPP): 半二重双方向通信インタフェースで、大量のデータをホストに送信できます。プリンター以外のデバイスにも広く利用されました。
5. Extended Capability Port (ECP): 半二重双方向通信インタフェースで、ランレングス圧縮（RLE）を行うことができます。

IEEE 1284準拠デバイスは、コンパチブルモードとニブルモードを実装することが義務付けられており、残りの3つのモードはオプションですが、実装が推奨されています。

接続方法

IEEE 1284では、いくつかのコネクタタイプとケーブル仕様が定義されています。

DB-25 (Type A): ホスト（コンピューター）側接続用コネクタ
Centronics (Type B): プリンターまたは周辺機器側接続用36ピンコネクタ
* Mini-Centronics (Type C, MDR36): 36ピンで小型化されたデバイス接続用コネクタですが、あまり一般的ではありませんでした。

IEEE 1284-IデバイスはIEEE 1284-AとIEEE 1284-Bコネクタを使用し、IEEE 1284-IIデバイスはIEEE 1284-Cコネクタを使用する必要があります。

さらに、デイジーチェーン接続によって、1つのパラレルポートに最大8つのデバイスを接続することも可能でした。

規格と関連情報

IEEE 1284に関する規格は、IEEE 1284-1994、IEEE 1284.1-1997、IEEE 1284.3-2000、IEEE 1284.4-2000など複数存在し、それぞれ異なる機能やプロトコルを規定しています。詳細なピン配置や仕様については、関連する規格文書を参照する必要があります。

まとめ

IEEE 1284は、かつてパソコン周辺機器の接続において重要な役割を果たした規格ですが、USBなどの高速で汎用性の高いインタフェースの登場により、その重要性は低下しました。しかし、その歴史と技術的な特徴は、コンピューター周辺機器の歴史を考える上で重要な要素となっています。

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