IVDR

iVDR（アイブイディーアール）とは

iVDRは「Information Versatile Disk for Removable usage」の略称で、一般社団法人iVDRコンソーシアムによって策定されたリムーバブルハードディスクの規格です。2009年にはISO/IECによって国際標準規格として承認されました。

その名の通り、カートリッジ内にHDDが内蔵されており、パソコンだけでなく、ビデオレコーダーやオーディオ機器、カーナビなど、様々な情報機器間でのデータ共有を目的としていました。アイ・オー・データ機器からはUSB接続用アダプターとiVDRメディアが、日立からはiVDR対応薄型テレビ「Wooo」やデジタルチューナーが発売されました。マクセルもiVDRメディアの製造販売に参入し、「iV（アイヴィ）」という愛称で親しまれました。

現在、iVDRの販売は終了していますが、その技術は様々な分野で活用される可能性を秘めています。

iVDRの規格

iVDRにはいくつかの規格が存在します。

iVDR EX：iVDRの上位規格で、2.5インチHDDを使用。放送業務向けの利用が想定されていました。
iVDR：一般的なiVDRで、2.5インチHDDを使用。
iVDR mini：小型の1.8インチHDDを使用。

iVDRには著作権保護機能であるSAFIA（サファイア）に対応したiVDR-Sメディアがあり、デジタル放送の録画にはiVDR-Sが必要でした。また、カートリッジに入っていない内蔵型も存在しました。コネクタはiVDRとiVDR miniで共通化されていますが、iVDR microは薄さから共通化されていません。

インターフェースは当初パラレルATA方式でしたが、後にシリアルATA方式に置き換わりました。また、USBに対応したiVDRメディアは「iVDR-i/O」と呼ばれていました。

iVDRの利点

iVDRには以下の様な利点がありました。

大容量：DVDやBlu-ray Discと比べて大容量のデータを保存できます。
高速な読み書き：500GBモデルで最大875Mbps、1TBモデルでは1Gbpsに迫る転送レートを誇ります。
高い互換性：機器メーカーを問わず、データの再生や共有が可能です。
小型・軽量：3.5インチHDDを使用する機器に比べ、小型で軽量、省電力で耐衝撃性に優れています。
国際標準規格：iVDR (Standard) は国際標準規格に認定されており、全世界的な互換性が保たれています。

iVDRの課題

一方で、iVDRには以下のような課題もありました。

対応製品の少なさ：iVDR対応製品を発売するメーカーが少なく、普及が進みませんでした。
高価格：一般的な2.5インチHDDに比べて高価であり、3.5インチHDDに比べると容量面で劣ります。
衝撃への弱さ：HDDを使用しているため、強い衝撃によりデータが破損する可能性があります。

iVDRの歴史

2002年、キヤノン、富士通、日立製作所など8社が「iVDRハードディスクドライブ・コンソーシアム」を設立しました。2007年には日立製作所がiVDRを搭載した薄型テレビ「Wooo」シリーズを発売。2009年にはコンソーシアムの名称を「iVDRコンソーシアム」に変更し、iVDR規格が国際標準規格として承認されました。

その後、各社からiVDR対応製品が発売されましたが、2018年にマクセルがiVの製造終了を発表し、2019年にはiVDRコンソーシアムが解散しました。これにより、iVDRは事実上終焉を迎えました。

主なiVDR製品

iVDRには、以下のような製品がありました。

iVDR メディア：著作権保護機能SAFIA非対応。
iVDR-Sメディア：SAFIA対応、デジタル放送録画用。
iVDR対応レコーディングハードディスク：アイ・オー・データ機器のRECBOXなど。
iVDR再生専用機（iVプレーヤー）：各社から発売。
iVDR用USBアダプター：パソコン接続用。

その他にも、映像ソフト入りiVDRメディアや、iVDR対応のハイビジョンテレビ、デジタルチューナーなどが発売されました。

まとめ

iVDRは、その利便性とポテンシャルにも関わらず、市場への普及が限定的であった規格です。しかし、リムーバブルハードディスクというコンセプトは、現在のストレージ技術にも影響を与えています。iVDRの歴史は、技術革新の重要性と、市場ニーズとの適合性について、重要な教訓を与えてくれるでしょう。

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