シリアルATA
シリアルATA（SATA）とは
シリアルATA（SATA）は、コンピュータとハードディスクドライブ（HDD）、ソリッドステートドライブ（SSD）、光学ドライブなどのストレージデバイスを接続するためのインターフェース規格です。2010年以降、旧規格のパラレルATA（PATA）やSCSIに取って代わり、現在では主流の接続規格となっています。
概要
SATAは、1.5Gb/s、3Gb/s、6Gb/sの転送速度を持つ3つの主要な規格があり、これらは互換性があります。異なる規格のデバイスを接続した場合、最も低い速度に合わせて動作します。ただし、内蔵機器用、外部機器用、小型機器用でコネクタ形状が異なるため、物理的な互換性はありません。
これらの規格は一般的に「シリアルATA 1」「シリアルATA 2」「シリアルATA 3」とも呼ばれますが、これらは公式な規格名称ではありません。正確には「SATA 6Gb/s」のように速度を明記したり、「Serial ATA Revision 3.0」のように規格仕様を特定して表記する必要があります。
経緯
パラレルATAの課題
旧規格であるパラレルATA（PATA）は、データを複数の信号線に分割して転送していました。この方式では、各信号線での伝送遅延のずれ（クロックスキュー）が発生し、データの再結合に時間がかかり、転送速度向上の妨げとなっていました。
シリアルATAの誕生
SATAは、この問題を解決するために、データを分割せずに一つの経路で転送するシリアル伝送方式を採用しました。これにより、高速なデータ転送が可能になりました。
2000年2月にシリアルATAワーキンググループが発足し、同年11月に「Serial ATA Revision 1.0」が発表されました。当初は「Ultra SATA/1500」という名称で規格が発表されました。
2002年2月にはシリアルATA II ワーキンググループが発足しましたが、この組織名から「シリアルATA 2」という通称が広まりました。本来は組織名であり、規格を指す言葉ではありませんでした。後にこの組織はSerial ATA International Organization (SATA-IO) へと改名されました。
初期には「シリアルATA 2」が、NCQ（Native Command Queuing）という機能や転送速度3Gb/sを指すという誤解がありましたが、実際には機能と速度は別々の規格であり、特定の部分のみを採用した製品も存在しました。この誤解を解消するため、2005年に「Serial ATA Revision 2.5」が発表され、規格が統合されました。
パラレルATAとの違い
SATAはパラレルATA（PATA）と比較して、以下のような点で大きな違いがあります。
- - 信号経路のシリアル化: データ転送方式をシリアル化し、伝送速度の向上と信号のずれを抑制
- - ホットスワップ対応: 電源を入れたままデバイスの着脱が可能
- - 通信速度の向上: 転送速度が大幅に向上（例：133.3MB/sから150MB/s以上）
- - ケーブル長の延長: 最大ケーブル長が45.7cmから1mに延長。eSATAでは2m
- - 低電圧化: 信号電圧が5Vから0.5Vに低下。消費電力と信号干渉が低減
- - コネクタの簡略化: 80芯40ピンのフラットケーブルから7ピンケーブルへ変更。配線が容易に
- - マスタースレーブ接続の廃止: 1本のケーブルに1台のデバイスを接続する方式に変更
- - ホストコントローラの標準化: ホストコントローラインターフェースはSATA規格範囲外になった（AHCI規格はSATAと独立）
- - 物理コネクタの規格化: 電源と信号コネクタの物理寸法と配置が標準化
Advanced Host Controller Interface (AHCI)
AHCIは、SATA 2.0と密接な関連があるホストコントローラの規格です。SATA規格には含まれませんが、SATA対応のホストコントローラでAHCIモードを使用することで、性能を向上させることができます。また、IDEエミュレーションモードも提供されており、古いOSとの互換性を維持できます。
プロトコル
トポロジ
SATAは、ポイントツーポイント接続のトポロジを採用しており、1つのホストポートに1つのデバイスが接続されます。
エンコード
物理層では、8b/10bエンコードを使用するため、実効データ転送速度は物理レートの80%となります。
リビジョン
Serial ATA Revision 1.0
Serial ATA Revision 2.0
Serial ATA Revision 2.5
SATA 1.0aとSATA 2.0の拡張仕様を統合
Serial ATA Revision 2.6
小型フォームファクタ向けのコネクタを規格化
Serial ATA Revision 3.0
ケーブル、コネクタ、ポート
SATAのコネクタとケーブルは、パラレルATAと比較して最も大きな違いです。SATAでは、3.5インチと2.5インチの記憶装置で同じコネクタを使用します。microSATAは1.8インチのデバイスで使用され、eSATAは外部接続に使用されます。
データ用
電源
eSATA
External Serial ATAの略で、外付けドライブ用に定義された規格です。
- - シリアルATAとは異なるコネクタ形状
- - 最大ケーブル長2m
- - ホットスワップ対応
- - 高速転送が可能（USB 2.0の5倍以上、USB 3.0と同程度）
- - eSATAとUSBの両方を排他利用できるコンボコネクタあり
eSATAp
eSATAに電源供給機能を追加した規格ですが、日本では普及していません。
Pre-standard implementations
Mini-SATA (mSATA)
SATA Express
PCIeを内部インターフェースとして使用し、最大転送速度2GB/sを実現しますが、現在はM.2に移行しています。
M.2 (NGFF)
U.2 (SFF-8639)
他の接続規格との比較
SATAは、その速度、信頼性、柔軟性から、広く普及しているストレージ接続規格です。他の接続規格と比較して、コストパフォーマンスに優れています。
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
- - Serial ATA International Organization
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