If Found...

『If Found...』

『If Found...』は、アイルランドに拠点を置くゲーム開発スタジオDreamfeelが制作し、アンナプルナ・インタラクティブより2020年5月にリリースされたビジュアルノベルです。本作は、1993年12月、アイルランドのアキル島が舞台で、主に23歳のトランスジェンダー女性であるカシオの内面的な struggle や友情を深く描いています。

ストーリーの概要

物語は、カシオが大学生活を送るダブリンから故郷のアキル島に帰る場面から始まります。長い間離れていたアキル島で、女性として新たな自分を受け入れたカシオは、母親との間に緊張が生まれ、意見の相違から口論となり、家を飛び出します。その後、彼女は旧友の男性コラムと彼のボーイフレンドであるジャック、さらに連れ添うバンドメンバーのシャンズとともに廃屋で共同生活を送りながら、彼女自身のアイデンティティを見つめ直していきます。

この物語には、もう一つのSF的なサブストーリーが展開されます。それは宇宙飛行士カシオペアが地球を飲み込もうとするブラックホールに立ち向かうというものです。この二つの物語は、進行する中で緊密に関連し、最終的には一つに収束します。

プレイヤーの体験

本作のユニークな点は、物語が進むにつれて、プレイヤーはカシオが日記に綴った内容を消していくという形式を通じて、彼女の経験を追体験することができる点です。画面上の消しゴムを使い、文字やイラストを消すことで、ゲームの進行が促され、心の葛藤や友情の物語が徐々に明らかになっていきます。

さらに、2020年10月22日にはNintendo Switch版が発売され、そこでは新たなエピローグやアートワークが追加され、プレイヤーにさらなる深みを与える内容となりました。

開発の背景

DreamfeelのディレクターであるLlaura McGeeは、元は個人で開発を行っていましたが、前作『Curtain』が終わった後、一人でプロジェクトを進行させることの難しさを痛感し、協力者を求めることとなります。そこで紹介されたアーティストのLiadh Youngとの出会いが、本作の方向性を大きく変えることになります。彼らは趣味やアイデアを共有し、豪華なグラフィックではなく、彼らの個性を活かしたゲームを作ることに注力しました。

2016年頃に示したノートに関するアイデアが基盤となり、ゲームの構造が形成されますが、開発は一時行き詰まりました。しかし、プライベートな忙しさを乗り越え、アンナプルナ・インタラクティブとの契約により、開発は再開されました。McGeeはトランスジェンダー女性であり、アイルランドの沿岸村で育った自らの体験が、物語の根底に影響を与えています。

評価

この作品は、その斬新なアプローチと深いテーマ性から高い評価を受けており、いくつかの賞にもノミネートされています。具体的には、2016年のIDI Awardsでは「Digital Design/Game Design」を受賞し、2020年のThe Game Awardsでは「Games for Impact」にノミネートされました。また、Pégases 2021においては「最優秀外国モバイルゲーム」を受賞、さらに第32回GLAADメディア賞でも「Outstanding Video Game」にノミネートされています。

『If Found...』は、心の葛藤や友情といったテーマをSF的な要素と組み合わせることで、プレイヤーに感動と思索の機会を提供しています。

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