Il-6 (航空機)

イリューシン Il-6

イリューシン Il-6（Ilyushin Il-6）は、ソビエト連邦が1942年に開発した長距離爆撃機です。この機体は、元々のIl-4に代わる高速爆撃機として設計されましたが、開発途中でその方向性は大きく変わりました。1942年12月には、燃料消費率が低いチャロムスキー ACh-30ディーゼルエンジンを搭載し、超長距離爆撃機としての特性を重視することとなりました。

開発経緯

Il-6は、初めての設計が完了した段階で、ソ連空軍からの要求に応じて高速性よりも航続距離の確保が求められました。この際、元々計画されていたシュベツォフ M-71星型エンジンは、チャロムスキー ACh-30 ディーゼルエンジンに置き換えられ、設計が見直されました。このエンジンは特に低摩耗で運用でき、Il-6に必要な航続距離を後押ししました。

1942年12月に再設計が完了し、試作機の製作が始まりました。初飛行は1943年8月7日に行われましたが、この際には予定していたACh-30BFエンジンではなく、出力が低いACh-30Bエンジンが搭載されていました。試験飛行の結果、取り扱いが難しいことや、エンジンの出力不足などの問題が指摘されました。1944年5月から7月の間には、機体側面の機関砲も取り外され、試験が続けられましたが、それでも操縦性や滑空性能が改善されないまま、その後の開発は中止されました。

機体の特徴

Il-6は、外見上はIl-4に似ているものの、より細長い胴体と全く新しい形状のアスペクト比8の主翼を持ち、高速飛行を目指しました。エンジンナセルは流線形が採用され、ラジエーターは翼内部に配置されて、抗力を減らす工夫が施されました。防御能力も大きく向上し、機首、背面銃塔、胴体の両側面、尾翼下に、可動式の5門の20mm機関砲を搭載することができました。

派生型

イリューシン Il-6の開発には、いくつかの派生型も存在しました。量産型として後に計画されたIl-6はチャロムスキー ACh-30BFエンジンを搭載する予定でした。また、M-90エンジンを装着した爆撃機型も検討されましたが、最終的にはディーゼルエンジン搭載型に全ての労力が集中しました。

要目

• - 乗員: 6名
• - 全長: 17.38 m
• - 全幅: 26.07 m
• - 空虚重量: 11,930 kg
• - 運用重量: 19,600 kg
• - エンジン: 2 × チャロムスキー ACh-30BF（M-30）、1,417 kW (1,900 hp)
• - 最大速度: 464 km/h
• - 巡航高度: 7,000 m
• - 航続距離: 5,450 km
• - 武装: 5 × 20 mm機関砲、内部爆弾倉に2,500 kg、外部に2 × 1,000 kg

このように、イリューシン Il-6は当初の意図とは異なる方向に進化した機体でしたが、最終的には様々な障壁により開発が中止されることとなりました。

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