Il-8 (航空機)

イリューシン Il-8 の概要

イリューシン Il-8は、ソビエト連邦のイリューシン設計局が、前機のIl-2を代替する目的で開発した地上攻撃機です。初期の試作機は速度向上が見られましたが、運動性の面で課題が浮かび上がりました。結果として、Il-8は量産体制に入らず、後のイリューシン Il-10に多くの設計要素を受け継ぐこととなります。

開発の背景

1942年の夏、ソビエト連邦の航空技術者セリゲイ・イリューシンは、最大で1,000 kgの爆弾を搭載できる重攻撃機の設計が求められました。それに応える形で、彼はIl-2の拡大版を設計することを決定しました。この新型機には、高出力のミクーリン AM-42エンジンが使用され、これによりIl-2からの性能向上が期待されていました。

当初、開発された機体はIl-AM-42と名付けられましたが、後にIl-8に改名されました。設計自体はIl-2をひな形としながらも、様々な新機能が取り入れられ、まったく新しい機体として誕生しました。

特徴と設計

Il-8の特徴は、エンジンの冷却器がコックピットに近い位置に設置され、後部銃手は装甲で保護されている点にあります。この装甲には12.7 mmのベレージン UBK機関銃が装備され、戦闘時の防御力を強化しました。また、主翼には23 mm VYa機関砲、7.62 mm ShKAS機関銃が搭載されており、火力にも優れています。さらに、最大で37 mmのNS-37機関砲への換装も可能でした。

機体の空力特性を向上させるために、後部胴体が延長され、プロペラの直径が増加、また降着装置も強化されていました。このようにしてIl-8は、戦闘機としての性能を向上させるための多くの工夫が施されていたのです。

飛行試験と結果

Il-8は2機の試作機が製造され、初飛行は1943年5月10日に行われました。試作機はそれぞれ異なる武装設定で、初号機はVYa-23機関砲を搭載した木製胴体の機体、二号機はNS-37機関砲と金属製胴体を備えた機体でした。

飛行試験では、Il-8はIl-2に比べて低高度で約50 km/hの速度向上と、15%の上昇率改善が確認されました。特に、航続距離はほぼ2倍に延びたことから、攻撃機または観測機としての適用が期待されました。

しかし、AM-42エンジンには信頼性に問題があり、排気の多さや振動といったトラブルがその性能の評価を妨げました。また、運動性では依然としてIl-2に劣る一方、国家による試験は1944年の初めに実施され、改善の余地が求められました。

最終結論

1944年には多座型の試作機Il-1の長所をIl-8に組み込む試みが行われ、追加の試作機Il-8-2が登場。性能が少しは改善されましたが、結局はすでに運用中だったIl-10に劣るものでした。この結果、量産に進むことはありませんでした。

基本仕様

• - 乗員：2名
• - 全長：12.9 m
• - 全幅：14.6 m
• - 空虚重量：4,910 kg
• - 最大速度：472 km/h
• - エンジン：ミクーリン AM-42
• - 武装：23 mm VYa機関砲×2、7.62 mm ShKAS機関銃×2
• - 爆弾搭載量：1,000 kg

Il-8は過去の評価からも様々な教訓を得て、イリューシン設計局の次の機体に生かされていくこととなったのです。

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