Internet Explorer for Macは、マイクロソフトがかつてMac OS向けに提供していたWebブラウザです。Mac OS XとClassic Mac OSの両方に対応していました。1996年に初めて公開され、翌年の1997年からは、それまで標準搭載されていたNetscape Navigatorに代わり、Macの標準Webブラウザとなりました。
歴史
初期のバージョンは、Windows版のInternet Explorerと同じコードをベースに開発され、高い互換性を維持していました。しかし、その後、互換性は徐々に低下していきました。特に最終版であるバージョン5では、独自のレンダリングエンジン「Tasman」が搭載されたため、当時のWeb標準に対応しつつも、Windows版Internet Explorer向けに作られたWebページの一部が正常に表示されないなど、Mac環境におけるWeb利用の妨げになることもありました。2003年、Appleは自社開発のSafariをMacの標準Webブラウザに採用したため、Internet Explorer for Macの開発と提供は終了しました。
沿革
1996年1月: 「Internet Explorer 2.0 for Macintosh」がマイクロソフトのWebサイトで無償公開されました。これはMac向けの最初のバージョンでした。同年11月にはバージョン3が登場し、HTML 3.2やCSSのサポート、Java、ActiveX、Netscapeプラグインへの対応も実現しました。 1997年8月: 「Internet Explorer 4.0 for Macintosh」が登場。マイクロソフトとApple Computer(現:Apple)との5年間の業務提携により、Mac OS 8.1からMacのデフォルトWebブラウザとなりました。 2000年1月: 「Internet Explorer 5 Macintosh Edition」が登場。従来のTridentに代わり、Tasmanという新しいHTMLレンダリングエンジンが導入されました。Tasmanは、当時の最新標準であるHTML 4.0、XML 1.0、CSS 1.0と2.0、PNG、DHTML、ECMAScript 262などに幅広く対応しましたが、一方で、Windows版との互換性は失われました。外観も大きく変更され、iMacのようなデザインで、9色のカラーバリエーションから好みのものを選べるようになりました。また、「インターネット スクラップブック」というWebページをまとめて保存できる機能や、オークションの状況を管理する「オークション マネージャー」といった独自の機能も追加されました。バージョン5.2では、Mac OS Xで導入されたQuartzに対応しました。 2001年: Windows向けにバージョン6が公開されましたが、Mac向けのバージョン6は開発されず、バージョン5系統が最終版となりました。2002年、マイクロソフトとAppleの5年間の業務提携が満了となり、Mac OS X v10.2がInternet Explorer for Macをデフォルトブラウザとする最後のMac OS Xとなりました。 2003年6月13日:マイクロソフトはInternet Explorer for Macの開発終了を発表しました。 2005年12月31日: サポートが終了し、2006年1月31日には公開も終了しました。ユーザーに対しては、Safariなどの他のWebブラウザへの移行が推奨されました。
2007年9月には、macOS向けのInternet Explorerの開発について、ユーザーの要望が多ければ前向きに検討する姿勢が示されましたが、実際に開発されることはありませんでした。その後、Microsoft Edgeによって、Internet Explorer 5 for Macの提供終了から約20年のブランクを経て、Mac向けのWebブラウザが再提供されることとなりました。