J・J・バッハオーフェン

ヨハン・ヤーコプ・バッハオーフェンについて

ヨハン・ヤーコプ・バッハオーフェン（1815-1887）は、スイスの文化人類学者、社会学者、法学者として知られています。彼はバーゼル出身で、特に法学の分野で高い評価を受けていましたが、彼の影響はそれにとどまらず、文化人類学にも大きな足跡を残しました。

生い立ちと経歴

バッハオーフェンは、1815年にバーゼルの都市貴族の家庭に生まれました。1841年にはバーゼル大学でローマ法の教授職に就任し、その後数年間、多くの法学の教育を受け持ちました。また、1842年から1845年にかけては、バーゼル刑事裁判所で判事としても活動しました。1845年から1866年にかけては、バーゼル控訴裁判所の判事としても業務をこなしました。

彼の本業は法学でしたが、古代法の研究を通じて古代社会の理解を深め、さまざまな著作を発表しました。その結果、文化人類学に対する洞察を提供し、広く影響を与えることとなりました。

バッハオーフェンの主な理論

バッハオーフェンは特に古代の婚姻制度についての独自の視点を持っていました。彼は、古代社会においては現在のような夫婦関係は存在せず、乱婚制度が主流だったとする「乱婚制論」や、母権制に関する考察を発表しました。1861年には『母権制論』を発表し、母権制による社会構造と、農業がもたらす影響について詳細に論じました。

彼の研究は、後にさまざまな思想家に影響を与えました。特に、文化進化の段階を提案し、以下の4つの段階を挙げました：

1. Hetairism - 乱婚の段階
2. Das Mutterecht - 母権制
3. Dionysian - 家長制度の始まり
4. Apollonian - 父権的な社会の形成

このモデルは20世紀の実証主義から批判を受けるまで、長い間影響力を持ち続けました。バッハオーフェンの理論は、宗教や文化、社会の起源に関するさまざまな論争にも影響を及ぼしました。

文化への影響

バッハオーフェンの思想は、ルイス・モルガンやエンゲルスをはじめとする多くの思想家にも影響を与えました。特にエンゲルスは、『家族・私有財産・国家の起源』の序文でバッハオーフェンを取り上げ、彼の理論を評価しました。また、彼の研究はジョゼフ・キャンベルの『西洋の神話学』などの著作にも引用され、文化や社会の理解に貢献しています。

著作

バッハオーフェンの研究は、多くの翻訳が行われています。代表的な訳書には『母権制序説』や『母権論』などがあり、特に後者は全3巻にわたる作品として評判です。これらの著作は、彼の理論をより深く理解するための重要な資料となっています。

バッハオーフェンは、生涯を通じて古代社会についての学問を追求し、その成果は今もなお多くの人々に影響を与え続けています。彼の理論は社会、文化、宗教に関する考察において、その深さと広がりから、現代においても多くの議論を呼び起こしています。

もう一度検索