J.BOY (曲)

浜田省吾「J.BOY」：時代を映す鏡

「J.BOY」は、浜田省吾が1986年に発表したアルバム『J.BOY』に収録された楽曲であり、彼の代表作の一つとして知られています。作詞・作曲は浜田省吾自身が手掛け、編曲はバックバンドであるTHE FUSEの板倉雅一と江澤宏明が担当しました。シングルカットはされていませんが、プロモーション盤が存在します。

楽曲の背景

「J.BOY」とは「JAPANESE BOY」の略であり、「成熟しない日本」という意味合いが込められています。浜田省吾は『DOWN BY THE MAINSTREET』（1984年）から『FATHER'S SON』（1988年）に至るまで、一人の少年が成長していく過程を、自身を投影しながら描き続けました。

社会へのメッセージ

この楽曲は、社会への虚しさや怒りを感じながらも、日々懸命に働き続ける人々を主人公としています。バブル景気の初期、浮かれた社会の影の部分を捉え、「頼りなく豊かなこの国」と表現しました。浜田省吾は、資源の少ない日本で多くの人々が豊かな暮らしをしていること自体が異常であると感じており、その危機感が歌詞に込められています。同様の視点は、1990年発表の「詩人の鐘」にも見られます。

ライブでの変遷

「J.BOY」は1986年の発表以来、ライブで必ず演奏される定番曲です。2011年のライブでは、楽曲に入る前に、1986年から2011年までの25年間の日本の歩みを浜田省吾独自の視点で振り返るMCがありました。彼は、世界一の経済大国になると言われた時代に日本人が慎ましさや謙虚さを失いつつあると感じ、バブル崩壊後の格差拡大、そして東日本大震災を経て、「25年前に自分自身に問いかけたことが、今になってもっと深い意味になり返ってきた」と語りました。

プロテストソングとしての側面

「J.BOY」はいわゆるプロテストソングと呼ばれることもありますが、浜田省吾自身は「日常を吹き飛ばせと歌ったら、それは自分自身に向けて歌っている部分もある」と語っています。

リミックス・ヴァージョン

2002年には、『SHOGO HAMADA ON THE ROAD 2001.COM』の緊急企画として、「J. Boy remix for J athletes」と題したリミックス・ヴァージョンが制作され、期間限定で無料配信されました。このバージョンは、2002 FIFAワールドカップと2006 FIFAワールドカップの応援ソングとして起用され、コンピレーション・アルバム『Football Music Album YELL』にも収録されました。

J.BOY (LIVE VERSION)

1991年には、ライブ盤「J.BOY (LIVE VERSION)」がシングルとして発売されました。このバージョンは、アルバム『J.BOY』のブックレットで使用されている写真がジャケットに使用されています。カップリングには、1985年に時任三郎に提供した「Walking in the rain」のセルフカバーが収録されています。

「J.BOY」は、時代を超えて共感を呼ぶメッセージと、ライブでの熱いパフォーマンスで、多くのファンを魅了し続けています。

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