JEEP (アルバム)

長渕剛12枚目のオリジナルアルバム『JEEP』：人生の転換期を映すポップで力強いサウンド

1990年 8月25日、長渕剛の12枚目のオリジナルアルバム『JEEP』がリリースされました。前作『昭和』から約1年5ヶ月ぶりとなる本作は、長渕剛が作詞・作曲を手掛け、彼自身と矢島賢による共同プロデュースで制作されました。

音楽性：レゲエの要素を取り入れたポップなサウンド

『JEEP』は、それまでの作品に比べてポップなサウンドが特徴です。レゲエのリズムを取り入れた楽曲もあり、長渕剛の音楽性における新たな一面を示しています。30代半ばを迎えた長渕剛が、自身の経験や人生観を歌詞に織り込み、聴く者に深く考えさせる内容となっています。

長渕剛自身は、本作について10代の頃に愛聴していたURCレコードのようなアルバムを目指したと語っています。また、矢島賢との共同作業に徹底的にこだわった作品であるとも述べています。音楽ライターの藤井徹貫は、本作について「森をさまよい、丸太を切り出し、それを彫り、歌となす長渕的なものが制作。先にサビだけ何個も作り、広告代理店とスポンサー様にお好きなものをチョイスしていただき、そこから1曲を構築するのが製造。不器用・武骨・無頼の三拍子が揃ってしまっている長渕は、あぶく銭を手に入れるより、我が道を進んだ」と評しています。

レゲエ調の楽曲「友だちがいなくなっちゃった」について、ライターの松村正人は、古澤良治郎と高橋ゲタ夫のリズム・セッションによる矢島賢の編曲を高く評価し、「長渕流ジャマイカン・ミュージックの可能性の中心を見事につかまえている」と述べています。また、水越真紀はアルバム全体について「全体にポップで、前二作のヒリヒリした感触は薄くなっている」、「三五歳という人生の真ん真ん中で、変わっていくものと変えたくないもの、どうしようもないものなどが流れていくのに目を凝らしている。そんなとき、強がりや粋がりよりも必要なものがあり、このアルバムではそういうものが歌われている」と分析しています。

楽曲：映画やドラマ主題歌、挿入歌も収録

アルバムには、1989年の映画『ウォータームーン』の主題歌「しょっぱい三日月の夜」と、タイアップのないシングル曲「JEEP」が収録されています。「しょっぱい三日月の夜」は、映画公開前の1989年 12月8日に先行シングルとしてリリースされ、オリコンチャートで1位を獲得しました。「JEEP」は1990年 7月25日に先行シングルとしてリリースされ、オリコンチャートでは2位を獲得しました。

さらに、10曲目に収録された「西新宿の親父の唄」は、1992年のフジテレビ系テレビドラマ『北の国から'92巣立ち』の挿入歌として使用されました。これらの楽曲を含め、アルバム全体を通して長渕剛の幅広い表現力と音楽性が感じられます。

レコーディングとリリース

ミックスダウンはASKAが設立したスタジオ「BURNISH STONE」で行われました。発売日は、CHAGE and ASKAのデビュー11周年記念日という偶然の一致もありました。

1990年 8月25日に東芝EMIのエキスプレスレーベルよりカセットテープとCDの2形態でリリースされ、2006年には24ビット・デジタルリマスター盤がCDのみで再リリースされました。

プロモーションとツアー

テレビ出演として、『夜のヒットスタジオSUPER』に出演し、「しょっぱい三日月の夜」、「JEEP」、「巡恋歌」、「カラス」を演奏しました。

アルバムリリース後には、「LIVE'90 - '91 JEEP」と題したコンサートツアーが開催され、32都市全42公演が行われました。このツアーの模様を収録したライブビデオ『カラス LIVE from '90 - '91 JEEP TOUR』もリリースされています。

批評

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「ヘビーだ。弱い心は聴けない、なかなか聴けないことを思い知らせる魅力、そんな男の唄がする。彼の声は生ギターがよく似合う」、「冬の寒空の下をジープでドライブする1日を淡々と綴った表題曲『JEEP』など、どの曲も文学的な歌詞が印象的な傑作だ」と絶賛されています。

一方、水越真紀は「（『お家へかえろう』や『カラス』で描かれる）日本社会批評の眼は実感よりも批評が先にある感じで、その熟成は次作以降に委ねられているのではないか。というのも、タイトルのフレーズを繰り返すレゲエ調で軽快なボーカルの『友達がいなくなっちゃった』が本作の芯に感じられるからだ」と、社会批評の点でやや否定的な意見を述べています。

チャート成績

オリコンチャートでは最高位1位を獲得し、約47万枚の売上を記録しました。

収録曲

アルバムには、「女よ、GOMEN」、「流れもの」、「友だちがいなくなっちゃった」、「電信柱にひっかけた夢」、「海」、「カラス」、「お家へかえろう」、「しょっぱい三日月の夜」、「浦安の黒ちゃん」、「西新宿の親父の唄」、「JEEP」、「Myself」の全12曲が収録されています。それぞれの楽曲には、長渕剛の人生観や社会への視点が反映されています。

スタッフクレジット

アルバムには、多くのミュージシャン、エンジニア、スタッフが参加しています。演奏者には、長渕剛、矢島賢、笛吹利明をはじめ、様々な楽器奏者やコーラス隊が参加しています。エンジニアリング、制作、プロモーションに携わったスタッフにも多くの名前がクレジットされています。

まとめ

『JEEP』は、長渕剛の音楽キャリアにおいて重要な転換期を象徴する作品です。ポップなサウンドと力強いメッセージ性、そして多彩な楽曲が融合した本作は、長渕剛の代表作として、長く愛され続けるでしょう。

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