JR西日本273系電車

JR西日本 273系電車

273系電車は、西日本旅客鉄道（JR西日本）が導入した直流特急形電車です。老朽化した381系を置き換える目的で開発され、2024年4月6日から特急「やくも」として運用されています。

開発の背景

特急「やくも」は、岡山駅と島根県の出雲市駅を結ぶ主要な特急列車ですが、長年使用されてきた381系は老朽化が進んでいました。そこでJR西日本は、安全性と快適性を向上させた新型車両として273系を開発しました。製造数は4両編成11本、合計44両です。

車両の特徴

車体

273系の車体は、271系をベースに設計されています。曲線区間を走行するために改良が加えられており、外観は沿線の風景をイメージした「やくもブロンズ」を基調としたカラーリングが特徴です。これは、鬱金色、黄金色、赤銅色などを組み合わせることで、大山の朝日や宍道湖の夕日を表現しています。先頭車両には貫通扉が設けられ、分割・併合運転にも対応しています。

ロゴマークは「やくも」の由来である「八雲立つ」から着想を得た雲のデザインで、381系時代のトレインマークの意匠を受け継いでいます。このロゴマークは、主要駅のホームにも設置されています。

走行装置

273系は、271系と同様に0.5M方式を採用しており、すべての車両が電動車です。特筆すべきは、JR西日本・鉄道総合技術研究所・川崎車両が共同開発した「車上型」の振り子装置です。これは、車上のジャイロセンサーが現在位置を検出し、マップデータと照合して制御を行うもので、従来の地上子方式に比べて乗り物酔いを軽減する効果があります。

また、制御装置の出力を無段階にすることで、より細やかな制御が可能となり、乗り心地が向上しています。2017年には、伯備線で空気ばね式車体傾斜装置の試験も行われましたが、空気消費量の問題から採用は見送られました。

主要機器

制御装置はVVVFインバータによる1C2M制御を採用。フルSiC素子を適用したPWMインバータが搭載されています。主電動機は日立製作所製のWMT110型で、220kWの低出力タイプです。

車内

273系の車内は、快適な移動空間を提供するために様々な工夫が凝らされています。1号車にはグリーン車と普通車指定席のセミコンパートメントが、2 - 4号車には普通車が配置されています。全席にコンセントが備え付けられており、枕付き回転リクライニングシートやチルト機構が採用されています。

グリーン車の座席は1+2配列で、フットレストが装備されています。セミコンパートメントは、4人掛けと2人掛けのボックスシートがあり、フルフラットにすることが可能です。普通車のモケットは、沿線の山々をイメージした青色を基調とし、麻の葉模様がデザインされています。

各車両にトイレと洗面所が設置されており、3号車には多機能トイレ、フリースペース、ユーティリティスペース、多目的室も設けられています。車内ではフリーWi-Fiが利用可能です。

車内チャイムには、米子市・松江市出身のメンバーからなるバンド「Official髭男dism」の楽曲が採用されており、上り列車では『Pretender』、下り列車では『I LOVE...』が流れます。

編成と配置

273系は、後藤総合車両所出雲支所に4両編成11本（Y1 - Y11編成）が配置されています。全車が電動車で、出雲市駅方の先頭車が1号車です。

運用

2024年4月6日から特急「やくも」として営業運転を開始し、同年6月15日からはすべての定期列車が273系で運行されています。

沿革

2020年10月：JR西日本が特急「やくも」への新型車両投入を発表。
2022年2月：形式名が273系に決定。
2022年10月：外装デザインを発表。
2023年10月：近畿車輛で報道公開、試運転を開始。
2024年2月：大阪駅で見学会を実施。
2024年3月：WESTER会員限定の試乗会を実施。
2024年4月：「やくも」での定期運用を開始。
2024年6月：「やくも」の全定期列車が273系に統一。
* 2024年10月：グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」を受賞。

273系電車は、安全性、快適性、デザイン性のすべてにおいて優れた車両であり、特急「やくも」の新たな顔として、利用者に快適な旅を提供しています。

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